レンズには基本的にフィルターを付けない主義だったのだが、それを変えることになったきっかけがあった。昨年の秋にバルセロナにコレフォックスという火の祭りを見に行ったのだが、その時に事件は起こった。
火の祭りという知識だけで、それほど過激とは思ってもいなかった。その祭りでは悪魔の衣装を着た人が先が三又のフォークのような槍を持って、その槍に花火がついている。花火の火の弾丸が激しい勢いで周辺に飛び交うという激しいものだった。この花火が目の前で破裂する様を、子供の行列と大人の行列の両方を3時間余りも写真を撮っていた。ずっとファインダーを覗きっぱなしだったので、終わった頃にはすっかりファインダー酔い。2種類あるには日本のお祭りの子供神輿と大人神輿と同じ。
子供や大人が花火を槍につけて目の前で発射するからあちらからもこちらからも火の玉が飛んでくる。化学繊維の服を着て行ってはいけないと聞いていたが、本当にそうだった。大きな火の玉が足元に落ちて爆発したので、靴とズボンの間のむき出しの足首にやけどを負った。このパレードに参加している子供や大人は厚いレインウエアのようなコートに同じ材質のレインハットをかぶりゴーグルをした完全武装だ、火の弾丸を発射する槍を持っていなければ、まるで消防士のパレードのようだ。時々現れる大きな竜の山車にはさらに大きい花火がついていて大きな火弾を発射する。
長い撮影に夢中になってパレードが終わってレンズを見るとフィルターに3か所も焼け焦げがついている。指でこすっても石鹸で洗っても焼け焦げは取れない。このレンズは、バルセロナに持って行ったSummilux 50mm第二世代で中古で買った時からフィルターがついていたので偶々そのまま使い続けていた。同時に持って行ったSummilux 35mm第一世代は最初からフィルターを付けず使っていたが、この夜の撮影に50mmを選んだことが幸運だった。35mmを使っていたらレンズが焼け焦げるところだった。
東京に戻ってフィルターを買おうとMap Cameraに向かい、店員さんに在庫を尋ねたところ新品と中古があり新品の方が安かった。不思議に思いながら新品を買おうとして、念のためにフードを試したところフィルターの縁の厚みのためにフードはつけられなかった。私のSummilux 50mm第二世代はシリアル番号から見ると1968年の製造のようだが、この頃のフードは最新のフィルターは使えないようだ。仕方なく、少し高い中古のフィルターを買って帰ってきた。
画質の低下など気になることはあるが、多分、誤差の範囲なので今後はなるべくフィルターを使おうと思った事件だった。