世界幸福度調査が発表されて、フィンランドは4年続けて一位だ。日本はずっと50位以下。2018年が54位、2019年が58 位、2020年は62位、 2021年は少し回復して56位。国民が幸福に感じていない国のようだ。
2021年版の幸福度ランキングは次の通り――。
1位:フィンランド
2位:デンマーク
3位:スイス
4位:アイスランド
5位:オランダ
6位:ノルウェー
7位:スウェーデン
8位:ルクセンブルク
9位:ニュージーランド
10位:オーストリア
北欧の国が上位にランキングされているのが、この調査の特徴的なところだ。
世界幸福度調査は、主にアンケートで行われる。「1人当り国内総生産(GDP)」「健康寿命」「社会的支援」「人生の選択自由度」「他者への寛容さ」「国への信頼度(腐敗を感じる程度)」の6要素の数値も加味されているが、中心は主観的回答を数値化したものだ。
その質問項目は、下記の6点。
1.人口あたりGDP
2.社会的支援(ソーシャルサポート、困ったときに頼ることができる人がいるか)
3.健康寿命
4.人生の選択の自由度
5.寛容さ(過去1カ月の間にチャリティーなど寄付をしたかなど)
6.腐敗の認識(不満、悲しみ、怒りの少なさ、社会、政府の腐敗が蔓延まんえんしていないか)
質問項目は、例えば、「昨日笑いましたか」とか、「昨日何か面白いものを学んだり、したりしましたか」とか、「昨日一日中人から丁寧に扱われましたか」と言うようなものだ。これらに対して、0から10までの11段階で答えるようだ。主観的な回答なので、より国民が感じている気持ちが現れる。
毎年トップの、フィンランドは非常に平等な社会だと言う。あまり人と競争しない社会で、教育は大学までタダだし、貧富の差も小さいと言う。北欧の国については一般に社会保障が充実していて、将来への不安が少ないと言うこともあるのだろう。
しかし多くの人が言うのは、フィンランドは天候が厳しいし、失業率もEUの平均の7.5%を上回る8.1%だ。それでも多くの人が幸せと感じているのは、社会保障の充実だけではなく、質問項目にある人間的な関係が良いからなのだろう。
フィンランド人の気質は、落ち着いた性格だと言う。フィンランドにはいくつか国民性を表す言葉があって、「悲観主義者を落胆しない」とか、「幸せは涙につながる」と言うような言葉もあるようだ。これを聞くと、どちらかと言うと、暗い性格とも言える。
日本の幸福度が低いのは、フィンランドとは逆のようなことなのだろう。貧富の差が大きく競争が激しい。長年の経済的な停滞のために、将来的な見込みが厳しい。社会保障も充実しているとは言い難く、2000万円問題のようなことが、常に頭にある。さらに、経済成長で、古い日本の社会の持っていた人間関係や社会構造が崩壊してしまった。人と人の関係が希薄になってしまった。
競争社会と言えば、例えばアメリカなども同じだが、アメリカはこの幸福度調査において14位にランキングされている。個人的には競争社会や貧富の差、犯罪率、人種差別などを考えると日本よりはるかに厳しい状況だと思うが、それでもアメリカ人はそう悲観的に考えていないと言うことなのだろうか。
北欧のような社会保障が整っている国と違い日本は、国全体としてのGDPは高くても、一人当たりGDPは低く社会保障も整っているとは言い難い。社会保障が充実して初めて人は他人を尊敬して扱えるようになる。この世界幸福度調査のランキングをよく考えて、社会のあり方を変えるとともに、私たち個人もできるところから人間としての関係を考え、良い社会を作りたいものだ。GNH(国民幸福量)を指針にするブータンのように、国民の幸せを一番に考える国であってほしい。