夜の娯楽は、ミステリーを読むことが最近の習慣だ。これがNetflixとかAmazon Prime Videoを見てしまうと、夜更かしをして翌朝が辛いからだ。
本は、「このミステリーがすごい!」から普通は選んでいるが、今回は最新ではなく、前に1位をとった「11/22/63 」by Stephen Kingを買った。やっと読み終わったが、誤算だったのはなんと長い小説だったということ。電子書籍の長所はたくさんあるが、欠点があるとすれば本の厚さは見てわからないこと。800ページを超える大作だった。
中心はケネディの暗殺をめぐるタイムトラベルだが、50年代末から60年代のアメリカの街、風俗、商品、文化が詳しく描かれる。この部分も長くなる要因だが、あまりにビビッドに語られるので長いという感じはあまりしない。まるではらはらとしながら映画を見ている感じで途中で飽きないで最後まで読みとおした。
フィクションの原則である、大きな嘘を一つついて、それ以外は一切嘘をつかないことを見事に守っている。タイムトラベルができるところだけが、設定として大きな嘘だが、それ以外は徹底的に当時の文化・風俗などを事実に基づいて書かれている。
とは言えキングの他の名作に比べるとストーリーやプロットにひねりがなく、結末も好きではなかった。本人のあとがきによると、息子のアドバイスでラストを変えたということだが、あまりにも甘ったるくて頂けない。作家になった息子ということだが、人の言うことを聞いてはいけないよ、キングさん。
写真は2005年に行ったダラスのものをHDDから探した。ダラスはこの時は3度目で、やっとこの有名なテキサス教科書倉庫ビルに行けた。建物は当時のままでオズワルドが撃った6階のフロアが「6階博物館」になっていて、暗殺にまつわる記録などが展示されている。オズワルドが撃った6階の南西の窓は最大の見どころだ。探したが写真は撮らなかったのかなかった。
窓から下をのぞくと、一枚目の写真の道路の上の赤いXマークが驚くほど近くに見える。三発撃って、一発がケネディの頭を「破裂させた」(キングさんの表現)そうだが、あの距離なら元海兵隊員のオズワルドは簡単に撃てる気がした。ちなみに、キングさんもウォーレン委員会報告書と同じように、陰謀説をとらずにオズワルドの単独犯行説をとっている。たった一人で歴史を変えるようなことができたことは偶然の結果としている。「人生は10セント硬貨のような小さなものの上で回る」は、そのような偶然を例えた、小説の中に出てきた表現だ。
ケネディが死んだ時はまだ小さかったから有名なテレビの中継は見ていない。日米の最初の衛星回線による生中継の実験を予定していたら、たまたまこの暗殺が起こって、それが衛星中継の第一回になったという放送だ。覚えているのは新聞の記事で、事件の当日かしばらくたってからなのかは分からないが、ケネディ暗殺の新聞記事を見たことは覚えている。
小説は基本的にはタイムトラベルもので好きなジャンルだ。小説の中でブラッドベリの「いかずちの音」について言及しているが、あれも良いタイムトラベルの短編だ。 あとがきの中でキングさんが推薦しているジャック・フィニイ の「ふりだしに戻る」は読まなければいけないだろう。
タイムトラベルの小説と言えば、高校生の時に学校の図書館から借りた小説がすごく良かったということだけ覚えているが、作者もタイトルも細かなストーリーも覚えていないので探しようがない。宇宙の果ての滅んだ文明を訪ねるはなしなのだが、エンディングは覚えているが途中はまったく覚えていない。もう一度読みたいが何も思い出せないのでフラストレーションがたまる。人生、こんなものだが。