ラグビーワールドカップの2033年までの男女の大会の開催地が発表された。
まず2025年の女子大会はイングランド開催、2027年の男子大会と2029年の女子大会はオーストラリア開催。そして2031年男子大会と2033年女子開催はアメリカとなった。
すでに2019年にラグビーの国際統括団体であるワールドラグビーは、ラグビーワールドカップから男女の性別を取り除くことを決めている。新型コロナウィルスの影響で開催が遅れたニュージーランドでの女子のラグビーワールドカップは、正式名称は「ラグビーワールドカップ2021」だ。これは他のスポーツ団体に先駆けた非常に良い判断だと思う。今回決まった各大会も、「ラグビーワールドカップ」の名称に年号がつくだけだ。
2023年にはフランスで男子の大会が開催される。そして、今回発表された女子のラグビーワールドカップ2025のイングランドの後は、同じホスト国で男女の大会を開催することになる。1つのホスト国・ホストラグビー協会が男女の大会を開催することは多くのメリットがある。非常に効率的なシステムだ。まず組織委員会は1つだけ組織される。これにより、大会を行うために運営のための教育やトレーニングなどが一回で済む。大会運営の面だけではなく、大会の盛り上げやラグビーの普及といった面からも2つの大会が2年の間隔をあけて行われることにより、そのホスト国内では盛り上がりが維持できる。
男女のラグビーワールドカップは名称こそ統一されたが、その規模や影響力においては男子の方が圧倒的に大きい。この男子のラグビーワールドカップへの関心やメディアへの露出が、女子の大会のプロモーションに大きな効果を発揮すると思われる。一種の小判鮫の戦い方ができる。これは、女子の大会の開催には有利な条件だ。
ワールドラグビーは、2009年に2015年イングランド大会と2019年日本大会を同時に決定した。それと同様に今回も、複数の大会を決めた。2月から始まった開催国設定プロセスの中で、開催国が検討されていた。特に激しい招致合戦が行われたようでもない。ワールドラグビーは、立候補する国のラグビー協会に、その国の政府の財務保障を要求している。コロナ禍で財政支出が逼迫している中で、政府が数百億円の保証をするのは簡単な判断では無いであろう。当然男子の大会の方が保証金額を高い。オーストラリアとアメリカの政府はそれを受け入れたと言うことだ。
開催地発表の記者会見で、ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は、アメリカは金塊だと言ったようだ。確かにそうであろう。世界1位の経済大国のアメリカでのラグビーワールドカップ開催は、ワールドラグビーにとっての夢であったのだろう。2018年にサンフランシスコで七人制の世界大会が開かれているが、アメリカはラグビーにおいては後進国と考えられてきた。しかしラグビーの普及や今後のワールドラグビーの経済的発展を考えればアメリカ進出は重要である。
ラグビーワールドカップは、従来はラグビーが盛んなヨーロッパやオセアニアだけで開催されてきた。そして、その既存の国以外へと、初めて新しい市場としてトライしたのが日本大会であった。これが大成功したことにより、ワールドラグビーも自信を持ってアメリカへ挑戦できる。
実際に開催地発表の記者会見で、ワールドラグビーのアラン・ギルピンCEOはアメリカ大会は、日本での開催で同様で、同じように素晴らしい大会になり、ファンや選手も感動するような時間を共有することができるであろうと言っている。
同じ事は、すでに30年前にFIFAがサッカーで行っている。アメリカでは、サッカーは、中南米からの移民の人口に支えられていたが、、メインストリームのアメリカ人にとってはサッカーは新しいスポーツであった。そのアメリカ市場の開拓とサッカーのメインスポンサーであるアメリカの巨大企業との関係からアメリカ進出に踏み切った。今回のワールドラグビーも同様の判断である。
今回の2033年までの大会の決定を受けて、2035年の男子大会がどこになるかと言う推測が始まっている。この何年も招致合戦に破れている南アフリカが有力と言う意見があれば、アイルランドと言う話もあるようだ。
2019年に本大会終了後にボーモント会長は、いつかまた日本での開催を考えたいと社交辞令的に言った。アジアでの開催があるとすると、2039年以降になるであろう。そしてその国が日本かどうかわからない。今後17年日本がどのような国になっているのか。中国はさらに力をつけて、ラグビーにおいては弱小であっても、市場としては巨大なので、ワールドラグビーは中国開催を選ぶかもしれない。どちらでも生きて見たいものだ。