「砂漠の星」ハリー・ボッシュシリーズ新作(ネタバレなし)

by Shogo

マイクル・コナリー(Michael Connell)のハリー・ボッシュ(Harry Bosch)・シリーズの25作目、「砂漠の星(Desert Star)」を読んだ。ハリー・ボッシュは、最近Amazon Prime Videoでテレビ化もされて、かなり有名になっている。

最近は通勤がないために(徒歩だから)、読むのは、たまの移動の際と寝る前の少しの時間だけだから、時間かかる。昨日は、昼間に仕事ではないが、仕事に近い案件で出かけ、その後、友人に会うために六本木に行ったので、少し乗っている電車の中で読み進めた。帰宅してから、少しだけ読もうとしたが、結局最後の展開から本が閉じられず、最後まで読んでしまい、寝不足だ。前に、良い睡眠のために、寝る前のミステリーはやめろというのを読んだばかりだったが、その通りの展開だ。

今回の作品、「砂漠の星」も、リネ・バラード(Renee Ballard)との共同捜査の作品だ。ハリー・ボッシュの引退に備えて、すでに21作目からは、リネ・バラードが作品に登場している。彼女も、ハリーと同じく、強い正義感を持ち、お役所仕事的なロサンゼルス市警のやり方に我慢ができずに、前作では退職している。今回は前作から1年後、行き違いからわだかまりがあったリネ・バラードからの電話から始まる。

探偵業を2人で始めると言う約束を一方的に破ってロサンゼルス市警に復帰したリネは、新設された未解決事件捜査班の責任者を務めている。そこに、ハリーにも参加してほしいと言うことであった。

ハリーも気になっている一家4人惨殺事件の捜査を続けることを希望していたために、わだかまりを捨ててこの話に乗った。

ネタバレになるので、詳しくは書けないが三件の事件が登場する。そのうちの1つが一家惨殺事件だ。第一の事件の市議会議員の妹の殺人事件の捜査を中心にする、今回のストーリーの展開は、過去数年間で最高の出来と呼んでよいだろう。

ただし、一家惨殺事件の捜査の展開はあまりにも都合良すぎて、少し説得力に欠ける部分がある。だが、ハリーの個人的な思いや、登場するエピソードなど、胸を打つこともあり、その違和感を十分に補って余りがあると感じる。

ハリーは以前の事件から病気になり体調も良くないようだ。かつベトナム戦争に参戦した経験がある年齢だ。今やベトナム戦争の終結からすでに50年近くが経過している。設定では、かなり若く年齢を偽ってベトナムに行っているが、それでも、年齢的には70歳位だろうか。今回の作品がハリーが登場する最後では無い事は確実だが、すでに彼の引退の仕方の構想は著者のマイクル・コナリーにはあるのだろう。

そのハリーのロサンゼルスの街や犯人を見る目の厳しさや、被害者の家族への暖かい眼差しは、ますますどちらも深まっているようだ。特に今回の作品では、彼は手荒な対応をすることになる。犯罪と犯罪者への憎しみと正義を求める姿勢がより強くなっているようだ。

特にメインで扱われる第一の事件の被害者の母親とのやりとりでは、少しほろっとしてしまった。この辺の人物造形は、かつて読んだ、ブライアン・フリーマントル(Brian Freemantle)のチャリー・マフィン(Charlie Muffin)・シリーズに登場するMI5の捜査官、Charlie Muffinと似ている。貧しい出自の境遇や、強い正義感と深い絶望感、この2人の架空の人物に共通するものだ。

新作が出ると必ず読むのは、マイクル・コナリーの、ハリー・ボッシュとレネ・バラードのシリーズ、そしてその姉妹作の、ハリーの異母兄弟のミッキー・ハラー(Mickey” Haller)のLincoln Lawyerシリーズが第一。続いて、新しい習慣で、アンソニー・ホロビッツ(Anthony Horowitz)の作品。著者の分身のホロビッツと元刑事のホーソーンが登場する、ホロビッツ・ホーソーン・シリーズが2番目。それから、ジェフリー ディーヴァー(Jeffery Deaver)のリンカーン・ライム(Lincoln Rhyme)シリーズくらいのものだ。

アンソニー・ホロビッツもジェフリー ディーヴァーも、ひねりのストーリー展開が面白い。アンソニー・ホロビッツの作品は、さらにそれに喜劇的な描写が面白く、目眩しのような効果があり、不意をつかれる。つまり、話の展開が全く読めない面白さだ。このシリーズは、まだ3冊しか出てないが、今後の新作が楽しみだ。

少し脱線したのが、「砂漠の星」では、第3の事件は解決せず、マイケル・コナリーの異母兄弟のミッキー・ハラーのシリーズに引き継がれる展開となっている。そこには、レネ・バラードが重要な役割で登場するであろうし、ハリーのその後を知ることができるかもしれない。それを読めるのは、多分来年の年末であろうか。今はただハリーの無事を祈るだけだ。

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