SNSの中毒性と脳の関係

by Shogo

スマホとSNSの中毒性については、以前より多くの指摘がされている。人類は、アフリカの平野にいる時から、生き延びるために周辺の情報を常に取り入れて、反応しなければいけない生活を行ってきた。猛獣や蛇など危険な存在が現れたときに逃げる必要があったからだ。このために新しい情報に接すると脳内にドーパミンが放出される報酬システムが生存の手段として人類に備えられた。これがスマホとSNSと結びついて、常に新しい情報を取り入れることによって快感を覚えるようになっているそうだ。手元に、スマホがないと不安の気持ちになるのは同じ理由だ。

SNSとスマホは常に新しい情報を提供してくれるために中毒性が高い。これを、さらに強化しているのが、SNSが開発した「いいね」やフォロワーと言うシステムだ。「いいね」やフォロワーの数が社会的な評価として可視化されるために、私たちが持つ別の欲求である承認欲求を満たしてくれる。これが、スマホとSNSの依存性をより強くしていると言われる。

前者の生存本能のための新しい情報をSNSやスマホを通じて取る行動は、生存本能として遺伝子に組み込まれてために、これを振り払うのはあまり簡単ではない。特にiPhoneが登場して16年になる現在では、SNSは、ほぼ24時間我々の体に接触している。我々の持つ生存本能がである、新しい情報を常にチェックしたくなる欲望を満たす方法が、歴史上初めて人類は持つこととなった。多くの研究者が、スマホとSNSは新しいドラッグと呼ぶ所以だ。

それでも、大人になってから、このような体験をする人と生まれてからスマホとSNSが手元にあるデジタルネイティブでは、どのような違いが生じるのかは、現段階ではまだわかっていない。

JAMA Pediatrics誌に発表された研究では、10代の子供を対象にSNSと脳の機能の変化を明らかにしている。この調査では、12歳から15歳の中学生を対象にして、脳スキャンを行って、脳の反応を調べている。この研究の結果分かった事は、12歳ごろにSNSを習慣的にチェックしている子供たちは、SNSを通じて「いいね」などを求める社会的報酬に対する感受性が時間とともに高まっていることがわかった。一方、12歳の段階で、SNSの使用頻度が少ない子供は、社会的報酬への関心が低く、年齢とともに低下していたことがわかった。

ただし、この研究者によれば、必ずしもこの結果がSNSが脳を変えていると言う因果関係が証明されていないと言う。しかし、傾向として、SNSが、脳の反応に大きな変化を与えている可能性は高いとして、これが長期的に大人になった段階で、どのような影響があるのかは、現時点ではわかっていないという。

この調査は、12歳から13歳の169人の生徒を対象にして、SNSとの接触頻度別にグループ化して調査対象としている。習慣的なSNSユーザは1日15回以上接触、普通のユーザは1回から14回、SNSを習慣的に利用しないユーザは1日1回未満として、調査対象とした。1年間隔で脳のスキャンを行っている。そのスキャンの際に被験者である中学生に対して、擬似的なSNSによる報酬系のシュミレーションとしてコンピューターゲームを行わせている。その際にゲームの結果として、笑顔の報酬を受けたり、不機嫌な顔を表示する罰を意味する反応を経験させている。

3年間にわたる研究の結果、SNSを頻繁にチェック済する中学生は、仲間からの反応に過敏になっていることがわかったそうだ。先に述べたように、人間は遺伝子のレベルから新しい情報に対しては過敏だ。それがSNSを頻繁にチェックするようになると、さらに過敏になると言う事のようだ。これが長期的に良い影響をもたらすのか悪い影響をもたらすのかは現時点ではわかっていない。

しかしながら、人類が何十万年かけて過ごしてきた生活様式や環境との関係が、スマホやSNSの登場以来、16年間で大きく変化している。これは、あまり良い影響もたらさないような気がする。

中学生にではない私にとっては長期的な脳の影響は関係ないが、頻繁にスマホでメールやLINEが来てないことをチェックする事は、思考の中断を意味する。このためにスマホから、そのようなアプリを全部削除するのが望ましいのだが、社会生活を行う上では、それは難しい。Facebook 、Instagram、 Twitterなどのアプリは研究の対象として必要なので削除はしないが、スマホの画面の奥のほうにしまってあり、頻繁にチェックしないようにはしている。

人類はこの16年間で、あらゆる情報が手の中にあると言う新しい環境を手に入れた。マクルーハンは、メディアは我々の身体機能や感覚の延長であるとことを指摘した。彼の時代のメディアは、体の体に組み込まれるようなものではなかった。だが、スマホは、肌の延長として体に接している。これはすでにマクルーハンがいった身体機能の延長ではなく、我々自身がメディアの中に取り込まれたとも言える。これが脳の発達や感覚的な社会の捉え方に対してどのような影響をもたらすのかは、あと数十年すると結果がわかる。

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