ブラジルでボルソナロ前大統領の支持者数千人が議会や大統領府、最高裁判所を襲撃して数時間も占拠するという事件が起こった。これはまるで2年前にワシントンで起こったトランプ支持者の暴挙と全く同じ出来事だ。
どちらも選挙の結果を認めないと言う民主主義の原則を踏みにじるものだ。国民による選挙によって選ばれた政治家が政策を決め国を運営するのは、当たり前と思っているが、世界はそうではない。Our World in Dataがまとめた調査によれば、2021年現在、選挙制民主主義か自由民主主義のどちらかを採用している国に住んで人口は、人類の29%にしか過ぎない。71%は、独裁などの民主的ではない政治体制下で生活していると言うことになる。
この民主的な体制下の人口の割合は、2000年に54%に達し歴史上最高となった。20世紀の初めには3%に過ぎなかった民主主義の国の人口の割合は、徐々に高まり、特に第二次世界大戦後に急激に上昇し、30%まで増えた。その後の数字は徐々に高まり、2000年に54%のピークを迎えている。
この数字が大きく落ち込んだのはインドが理由のようだ。2019年の選挙でモディ首相が勝利した後で、2つの組織がインドの政治体制を民主的でないと結論つけたためだ。自由を守る団体として知られる、NGOフリーダムハウスは、インドの政治体制を部分的自由民主主義として格付けた。またイエテボリ大学のV-Dem研究所は、選挙による独裁体制として、民主的な国家ではないと評価した。どちらも人権団体への圧力の増加や学者・ジャーナリストへの脅迫の増加、イスラム教徒を狙ったリンチ等の攻撃が続き、このような変化が政治的権利と市民の自由の悪化につながり、完全な民主主義体制ではないと評価されている。インドの人口の大きさのために、結果として民主主義体制下の人口の割合が大きく落ち込むこととなった。
インドはチャイナリスクを考えると経済的に世界の期待は大きい。優秀な多くの人口を抱え、製造工場の立地としても豊かなマーケットとしても世界の経済の成長のエンジンとして考えられている。それがこのような評価がされていることについて少し驚いた。
インドも含めて世界のどの国のこともあまりよく知らない事に改めて気づかされる。日本やアメリカのメディアを見ているだけでは、世界の動きは全くわかっていない。このようなことがもっとたくさんある。何一つ知らないのである。
この民主的な体制で生きている人口について少し考えてみると、体制は整っていても、インドのように実態は部分的民主主義と評価されるケースもある。例えば日本はどうだろうか。確かに選挙制度や政治体制そのものは民主的に運営されているようにも思われる。しかし、実態として果たしてそうなのかを国民が考える必要がある。民主的な政治体制下の29%の人口に日本の人口を入れるべきなのかどうか、外部の評価団体ではなく、私たち自身が考えることなのだろう。