Metaが広告を表示しないFacebookとInstagramの有料版をヨーロッパで検討していると言う記事を読んだ。
ヨーロッパは世界で最も厳しい個人情報保護の一般データ保護規則(GDPR)があり、オンライン上のデータ取得・管理を規制している。この法律に基づいて、2023年4月にEUの最高裁判所は、ユーザから明示された同意を得ない限り、Facebook、 Instagram 、WhatsAppを含むMetaのプラットフォーム全体及び外部のウェブサイトやアプリから収集した個人ユーザに関するデータを利用することをMetaに禁止した
それ以前にも2023年1月にユーザにパーソナライズされた広告を見せたとして、アイルランドの規制当局から3億9000万ユーロの罰金をかけられている。
そして、ヨーロッパではネット産業がさらに規制される。GDPRに加えて、デジタルサービス法と呼ばれる新しい法律が施行された。この法律によって、オンライン上の違法コンテンツについては厳しく取り締まることになる。さらにソーシャルメディア上の個人データの利用については、さらに厳格になる。この法律の施行に合わせて、すでにSnapchatやMetaは13歳から17歳をターゲットとした広告を制限している。
消費者保護と言う点では、ヨーロッパはどの地域に先駆けており、来年にはデジタル市場法と呼ばれるネットビジネスにおける市場慣行を根本から変える法律も予定されている。この法律が成立すると、AppleはiPhone生態系と言われたり、Apple 税と呼ばれる、iPhoneのアプリをApp Storeだけから独占的にダウンロードさせる仕組みは違法となる。これで、iPhoneのビジネスモデルは、ヨーロッパでは崩れる。
一方で、これは問題のあるアプリのiPhoneへのダウンロードを意味する。Androidのようにアプリが管理されていない状況が発生するからだ。これもどうなるか注目しなければいけない。
話を戻すと、Metaのサブスクリプションモデルの導入だ。メディアのビジネスモデルは様々なパターンがあるが、その中で代表的なものは広告モデルとサブスクリプションモデルだ。広告モデルは、テレビやSNSでよく使われているモデルである。これはユーザが利用する際にハードルが低く、利用者拡大に役立つために多くのメディアが採用している。そしてユーザが増えると広告収益も大きくなるためにスケーラビリティーも兼ね備えている。ただ欠点もあり、広告に依存するために、収益が不安定なことと、広告が増えすぎるとユーザ体験が低下することだ。」
一方、サブスクリプションモデルは、月額料金で安定的な収益が見込めるためにビジネスの安定性が高い。結果的に収益が安定しているために、より、高品質なコンテンツの提供をメディアが行うことができる。欠点はコンテンツにアクセスするハードルが高いことだ。利用料を継続的に払う判断をする際に多くの人が躊躇する。このためにビジネスの規模としては、歴史的に見てもサブスクリプションモデルはユーザの数が広告のモデルに比べてもはるかに少ない。
そのような事を考慮して、Metaが本気でサブスクリプションモデルを検討しているかどうかは不明だ。確かにYouTubeはプレミア会員として広告を見ないで済むプランも提供している。しかし、FacebookやInstagramで広告を見ない有料プランを選ぶ人はそう多いとも思えない。
それを考えると、Metaは、広告のデータの共有を何度もクリックをさせて、データ共有の厳格な運用を行い、それでもさらに、個人データが広告に使われることを望まない人のためには有料プランへの変更の選択肢を用意することで、規制当局への言い訳に利用しようと考えているのではないだろうか。
創業以来20年、広告モデル一辺倒のMetaが、例えばヨーロッパ地域だけであっても、サブスクリプションモデルに転換する事はありえないし、無理だとわかっているだろう。Metaの会社全体のビジネスの10%を占めていると言われているヨーロッパでの広告モデルを維持するための方便ということなのだろう。