Amazonが音楽事業の人員削減

by Shogo

Amazonが、Amazon Music部門の人員削減に踏み切ると報じられている。昨年から全社的に人員削減は行われているが、今回のAmazon Music対象の人員削減は、全社的な経営戦略として重点領域に音楽部門が入らないということのようだ。しかしながら、これはAmazon Musicそのものを閉鎖したり、撤退するということではなく、拡大の意志はないだけで、現状のサービスを維持してSpotifyやApple Musicと同様のサービスは続けていくのだろう。

10月末に発表されたAmazonの7月から9月期の決算では、利益が3.4倍の987億ドルとなり事業は好調だ。直営EC販売売上は前年同期7 %増、第三者がAmazonで販売するマーケットプレイスが20%増、Amazon Prime VideoやAmazon Music unlimitedなどのサブスクリプション部門は14 %増、クラウド・サービスのAWSは12 %増、自社サイトやアプリの広告販売事業部門は26%増。広告販売事業部門の売上は120億ドルを超え、既にサブスクリプションの101億ドルよりも多くなっている。Amazonは、GoogleとMetaに続く、第三位の広告メディアとなっている。

このように会社全体では、好調にもかかわらず、音楽部門の人員削減に踏み切るのは、音楽事業が期待したほどの成長していないからであろう

2023年9月時点の音楽ストリーミングサービスのシェアでは、Spotifyが30.5%、 Apple Musicは13.7%、Tencent Musicは13.4%、 Amazon Musicが13.3%、 YouTube Musicが8.9% 、Neteaseが6.1%、Yandexが2.2%となっている。トップのSpotifyの半分のシェアであるが、Apple Musicと変わらないシェアを持っている。ユーザが中国に偏っているであろうTencent Musicを除けば、Apple Musicとともにほぼ業界2位の地位にあるといっても良い。それでも音楽に未来は無いと言うような経営判断をしたのであろうか。

音楽については、ライブオーディオアプリのAmpは2022年3月に開始されたが、2022年10月に閉鎖が決定している。ユーザがラジオ番組やpodcastを制作する際に、DJとしてメジャーな音楽も使え、一部のクリエイターに人気があったようだ。しかし、Amazonが期待するほどの市場を取れなかったということなのだろう。たしかに、Clubhouseのように、一時はオーディオ・ソーシャルメディアが盛り上がったが、そのブームは一瞬で終わった。その市場の拡大を期待してAmp事業の開始だったが、あてが外れたのかもしれない。

これまでもAmazonには様々な失敗事例が多い。代表的なのはスマートフォンだ。今回の音楽部分の縮小により、Amazon Musicはプライム会員向けのおまけ的なサービスと有料のAmazon Music unlimtedが今の形で継続するのだろう。

Amazon Prime会員向けの特典としてついてくる、Amazon Musicは新曲は少ないものの、クラシック音楽など、様々な音源が楽しめ、私もApple Musicを契約する前はよく利用していた。新曲も含めた様々な曲が聴けるAmazon Music unlimitedは月額980円で、金額的にはSpotifyやApple Musicと変わらない。世界的にも13.3%のシェアがあるので市場に受け入れられている。しかし、今後は、SpotifyやApple Musicと本気で競争する意思がないということかもしれない。EC販売やマーケットプレイス、クラウド事業、広告事業に比べれば、あまりにも小さな市場ということなのだろう。

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