テスラの不調とEVの今後

by Shogo

テスラが、業績が悪化のために従業員の1割以上を削減する方針だと報じられている。理由は、米国の電気自動車(EV)市場の需要失速と中国の競争激化だそうだ。

米国のEV市場は、2024年最初の3ヶ月で前年比2.6%増の約26万9千台を販売したが、2023年第4四半期と比べると7.3%減少している。この市場全体のスローダウンの中で、テスラの市場シェアは2023年初頭の62%から51%へと縮小した。

テスラの販売台数は、前年同時期比13%以上の減少だが、多くの新競合企業は2倍以上の成長率を記録している。ヒュンダイ、メルセデス、BMWなどの伝統的な自動車メーカーもEV販売を増やし、テスラの市場シェアを奪っている。特にBYDは低価格帯のEVで販売を伸ばしており、2023年7-9月期のEV販売台数はテスラに迫る43万台に達した。テスラは技術面では優位性を保っているものの、コスト面での競争力が問われている。

テスラは2025年後半に次世代EVの生産を開始する計画だ。低価格の新型車投入により販売拡大を狙うが、マスクは増産の難しさも指摘している。新車の成否がテスラの今後を左右しそうだ。一方、自動運転の完全実用化にも期待がかかる。だが、どうなってもBYDの低価格帯EVが、販売台数では世界で需要を伸ばすのは間違いない。

需要減速や競争激化への警戒感から、テスラ株は2022年来で30%以上も下落している。これは、その時価総額の大きさから株式相場全体にも大きな影響を与えている。

今後のEV市場の不透明感の要因の一つは大統領選挙の行方だ。トランプが大統領に帰り咲くと、バイデン政権が進めているEV補助金が打ち切られてEVの販売に大きな影響が出る。しかし、それにしてもEVの環境負荷削減効果に疑問符がついている状況で補助金は必要なのだろうか。バイデン大統領は電気自動車への移行を促進する政策を推進しており、2030年までに販売される車の半分を電気自動車にするという目標を掲げている。現在、新車登録の20%未満が電気自動車だ。バイデン政権が続くと2030年の目標を達成するたえに、手厚い補助金額が継続されるだろう。EV市場の今後の成長にとっても、今年の大統領選挙は大きな意味を持つ。

日本政府も2035年までに新車販売で電動車100%を目指しており、EV普及を後押しするため補助金制度が継続・拡充されている。日本の2024年度のCEV補助金の上限額は、EVが85万円、小型・軽EV、PHEVが55万円、FCVが255万円となっている。2024年度からは車両性能に加えて、充電インフラ整備状況、製造時のCO2排出削減、サイバー攻撃対策、アフターサービス体制など、メーカー側のEV普及に向けた取り組みも評価対象となる。同じ性能の車でも、メーカーによって最大73万円の補助額の差が生じる。自治体独自の補助金制度もあり、国と自治体の補助金を併用できる場合がある。例えば東京都のZEV補助金は、CEV補助金とは別に最大40万円が支給される。

ただし、これらの補助金の対象は国産車だけではない。むしろ、輸入車のほうが多い可能性すらある。日本に残された主要産業である自動車産業にとって、この政策は正しいのだろうか。

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