アメリカでは、GoogleやFacebookに対する独占禁止法の訴訟が続いている。ヨーロッパにおいても同様の動きがあり、個人情報収集や国境越えて行われる取引の課税についての議論がある。そして、2020年4月には7月には、EUにより取引透明性の法律が導入された。
日本でも同様に巨大IT企業に対する警戒感がある。政府は2月1日より「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が施行された。
国内の売上高が、3000億円以上の電子商取引サイトや2000億円以上のアプリストアが対象となる。対象となる企業は、3月1日までに届け出て、経済産業省が規制対象に指定する。
対象企業は、取引の透明性と公正性の向上のために取引先と消費者に対しする取引条件や喉の情報の開示義務を持つ。
もう少し正確に言うと対象になる事業者は、以下の3要件のいずれも満たすものであることになっている。1)デジタルプラットフォームであること、2)ネットワーク効果を有すること、3)経済産業大臣が指定したものであること。
まず、デジタルプラットフォームは、多数の者が利用することを予定したネット上の場を利用して、商品販売やサービス提供を行うものであることで、特定の商品の販売事業者は条件に当てはまらない。
2)のネットワーク効果は、利用者が増加することで利便性が増して、ネットワークの参加者が増えるような関係にあることが条件になる。具体的には、その場を利用して商品を販売する小売事業者が増えれば、一般消費者も、そのサイトから購入する様になり、一般消費者の数が増えれば、小売事業者が増えるという、相乗効果があることだ。3)は、売り上げを指定してその額以上の事業者が対象となる。
具体的には、この法律の対象になるのは、楽天市場、Amazon、PayPayモール、メルカリ、Google Play、 Apple Storeとなる。
この法律は取引条件の変更等についての事前告知や情報開示について一定の効果があると思われる。昨年の楽天市場による一定以上の買い上げでの送料無料化と言うような、突然の一方的な決定が行えなくなる。しかし、プラットホームに対しては、情報開示等の業務で事務量が増えることが予想されるだけで、事業の展開には大きな影響はない。アメリカやヨーロッパで追求されている様な、独占禁止法を利用した競争の促進と言う面からはあまり効果が無いように思われる。ネットワーク効果によって、今後も巨大化を続けるプラットフォーム企業と競争して、市場に参入することはますます難しくなっていく。