デジタルで変わること、変わらないこと

by Shogo

デジタルマーケティングとは一体何でしょうか?これは、最先端のスタートアップ企業が取り入れる最新のマーケティング手法なのでしょうか?それとも、従来のマーケティングを否定し、全く新しいアプローチを求めるものなのでしょうか?実際には、そうではありません。

デジタルマーケティングは、従来のマーケティングの基本理念、すなわち「顧客に価値を提供し、維持する」という核心部分を進化させた形で展開されています。これまでのマーケティングの枠組みにデジタル技術を取り入れることで、より効率的で、より正確な施策が可能になったのです。

マーケティングは時代と共に進化してきました。これまでも新しい技術やメディアが登場するたびに、それに適応し、最適な手段を活用して事業活動や販売促進を行ってきました。デジタル技術もその一環であり、今やビジネスの中核をなす要素として定着しています。では、具体的にデジタル技術はマーケティングをどのように変えているのでしょうか?以下の5つのポイントで見ていきましょう。

1. メディア環境の変化

スマートフォンの普及により、インターネットはいつでもどこでも利用できる存在になりました。総務省の「通信利用動向調査」によると、2018年から2019年にかけてインターネット利用者は約10%増加し、全体の89.8%に達しています。同時に、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といった従来のマス4媒体への接触時間は減少し、一方でデジタルデバイスを通じたメディア接触時間は年々増加しています。この環境下では、ターゲット層に広告を届けるために、インターネットの活用は欠かせないものとなりました。

さらに、デジタル技術によって双方向のコミュニケーションが可能になり、消費者とのリアルタイムなやり取りが促進されています。たとえば、ユーザーが商品に関して疑問を持った場合、その場で問い合わせができたり、即座に注文が可能だったりする点は、従来のマス広告では実現できなかった大きな変化です。実際、2019年にはインターネット広告費がテレビ広告費を超えたことは、デジタル時代の到来を象徴する出来事でした。

2. 消費者行動の変化

消費者の購買行動も劇的に変化しています。今や、スマホを通じて友人やSNSからの情報を瞬時に得て、その場で商品を検索し、購入に至るという流れが一般化しています。これは、いわゆる「マイクロモーメント」の瞬間です。消費者はいつでも、どこでも情報を収集し、すぐに行動に移すことができるため、企業はその一瞬一瞬に対応する必要が生じています。

また、価格比較サイトや商品レビューサイトの台頭により、消費者は価格やスペックの情報を簡単に手に入れることができます。そのため、消費者の判断は、より厳密になり、企業はその期待に応えるために製品やサービスの提供に工夫を凝らす必要があります。

3. ターゲティングの精緻化

デジタルマーケティングの最大の強みの一つは、ターゲティングの精度向上です。ウェブ上の行動データを解析することで、消費者の関心、購買意欲、属性を高い精度で把握することができ、それに基づいた商品開発やプロモーションが可能になっています。以前は、オーディエンス全体を対象にした大まかな広告しか打ち出せませんでしたが、現在はデータドリブンなマーケティングにより、個々の消費者に最適な広告を、最適なタイミングで届けることができるのです。

たとえば、消費者が特定のウェブページを訪れた履歴をもとに、その興味を引く商品広告を後に別のサイトで表示する「リターゲティング広告」などが典型例です。このように、デジタルの力を使えば、より効果的なプロモーションが可能になります。

4. 広告効果測定の進化

インターネット広告の大きな特徴は、その効果を詳細かつリアルタイムで測定できる点です。これにより、広告キャンペーンの成果を即座に把握し、必要に応じて広告の内容や配信対象を柔軟に変更することができます。これは従来のマス広告では成し得なかった、デジタルならではのメリットです。たとえば、クリック率やコンバージョン率を追跡し、広告がどれだけの成果を挙げているのかを正確に知ることができるため、迅速なPDCAサイクルを回すことが可能です。

5. 広告予算の柔軟性

デジタル広告は、予算の面でも非常に柔軟です。ターゲット層や地域を細かく設定し、少額の予算からでも効果的な広告を展開できるため、従来のマス広告よりもコスト効率に優れています。たとえば、小規模な企業でも、SNS広告を使えば特定のニッチ市場をターゲットにした効率的なマーケティングが可能です。逆に、大企業であれば、大規模なキャンペーンを実施することももちろん可能です。

これらのポイントを踏まえると、デジタル技術を取り入れないマーケティングは、もはや現代のビジネス環境では不十分であると言えるでしょう。デジタル技術は、従来のマーケティング施策を革新し、企業が効率的かつ効果的に価値を創造し、顧客を維持する手段を提供しています。

しかし、マーケティングの根本的な戦略立案や企画のプロセス自体は、変わっていません。重要なのは、デジタルと従来のマス媒体広告をバランスよく活用し、最適なマーケティングミックスを構築することです。テレビドラマの大ヒットが生まれるように、マス4媒体が消えた訳ではありません。広告を計画する際にも、インターネット広告の長所と限界を知って、マス媒体広告と組み合わせて使うことが重要なのです。たとえば、テレビCMやラジオ広告のようなマス広告と、精緻なターゲティングを可能にするデジタル広告を組み合わせることで、より広範かつ効果的なマーケティング施策が実現できるのです。

【広島経済レポート寄稿文】

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