人気を誇ったInstagramが、2023年に最も削除されたアプリとなったことが明らかになった。TRG Datacentersの調査によると、全世界で100万人以上のユーザーが毎月「Instagramアカウントを削除する方法」を検索しており、10万人あたり12,500件以上の検索があったとのことだ。
Instagramは2010年のリリース以来、写真共有アプリとして急成長を遂げ、一時は20億人以上の月間アクティブユーザーを抱える巨大プラットフォームへと発展した。
Instagramは「インスタ映え」の言葉を生み、多くのフィルターを使った雰囲気のある写真が作れて人気を集めた。まさにスマホ時代を体現するアプリだった。その後は、動画のストーリーズ機能が人気になった。 動画投稿が24時間で消えるため、日常を気軽にシェアできると人気が爆発して、現在はInstagramユーザーの約70%が利用しているという。
画像や動画を中心とした投稿がInstagramの特徴で、こだわったビジュアルの投稿が人気を集めやすい。10〜20代女性の利用率は8割超、10〜20代男性の利用率も7割超と、若い世代だけでなく性別・世代を問わず利用されている。
しかし近年、商業化の進行や広告の氾濫、スポンサー投稿の増加などにより、ユーザーの不満が高まっている。今のInstagramを見てみると、広告だらけになったフィードに、私も含めて多くのユーザーが嫌気がさしていると思われる。それから、Snapchatを模倣したストーリーズ、TikTokに対抗するリールズなどに注力する余り、写真共有という本来の目的から逸脱してしまったのではないかと思われる。つまり、プラットフォームが性格を失ったということだ。
現在もInstagramには世界中に20億人のユーザーが存在するが、毎月100万人がアカウント削除を検討しているというトレンドが続けば、1年以内に状況が一変する可能性がある。
この傾向が続くと、広告によって成り立っているInstagramの収益は危機的な状況になる。Instagramの広告を出稿する企業にとってリーチが減少し、エンゲージメント率も減ってゆくことが予想される。Instagram広告の効果も以前ほど見込めなくなるだろう。企業は、広告費用対効果(ROAS)の悪化で、マーケティング予算の見直しを迫られる要因となる。
かつての「インスタ映え」ブームは過去のものとなり、プラットフォームの在り方そのものが問い直される時期に差し掛かっているのかもしれない。あるいは、このところ、個人的にはデジタル・デトックスでなるべくソーシャルメディアにアクセスしないようにしているが、多くの人も同じようにしているのかもしれない。
Instagramの凋落は、ソーシャルメディア全体の変化の兆しとも捉えられる。ユーザーは、いわゆるSNS疲れになっているのかもしれない。だから、Instagramが生き残るためには、初心に立ち返り、プラットフォームの性格を明確にする必要があるのだろう。何でもできるというのは、何もできないに見えてしまう。