ブロック・チェーンの技術を利用する作品が美術界で注目を集めることになった。BeepleことMike Winkelmann(マイク・ウィンケルマン)のデジタル作品が、クリスティーズで6,900万ドル(75億円)で落札されたのだ。
落札された作品は、「Everydays – The First 5000 Days(毎日 − 最初の5000日)」と題された作品だ。デジタルで描かれた5000の絵が集まったもので、5000日にわたって毎日1作品を作り、それをコラージュして、1つの作品としてまとめている。これは純粋なデジタル作品なので、物性は無い。しかし、NFTで真正が保証されている。
NFTとは、nonfungible tokenの略で、非代替性トークンと訳される。ブロックチェーン技術を用い、複製が可能なデジタル作品であっても、唯一性を保証して、所有可能とする技術だ。NFTを使えば、作品の真正、所有者、所有歴などを記録することができる。
デジタル作品は、普通はいくらでも複製が取れるが、ブロックチェーンの技術をつかったNFTによって真正が保証されている。
既にNFTで保証される美術品のマーケットは立ち上がっており、2020年には前年から299%の成長率で、2億5,000万ドルに達している。そして、このBeepleの作品の6,900万ドルは、その規模を大きく押し上げた。
Beepleは、デジタルで作られNFTで証明されている作品を作り続け、すでに億円単位で売られている。しかし、今回の6,900万ドル(75億円)と言うのは、NFTで保証されたデジタル作品にも大きな価値があると言うことを証明することとなった。
同時に、クリスティーズがNFTの作品を取り扱うと言うことも大きな意味がある。NFTで保証される作品が美術界において美術品として受け入れたことの証明でもあるからだ。
Beepleは作品が75億円で売れたことで、作品の価値が最も高い存命の三人のアーティストの一人となったそうだ。他の2人は、ステンレスのウサギなどで有名なジェフ・クーンズ(Jeff Koons)、プールを描いた作品や写真を組み合わせた作品などで有名なデイヴィッド・ホックニー(David Hockney)だ。当然、この二人は美術品としてが物性が明確な彫刻や絵画を制作している伝統的なアーティストだ。
NFTはブロックチェーンの技術を使ったもので、ビットコインの同じように、その所有権の歴史や、真性、所有者等を記録することができる。この記述によってたとえ複製できるデジタル作品であっても、それが本物であることの証明になる。これを使えば、デジタルイメージや歌、ビデオなども、唯一の作品として販売が可能になる。先日もTwitterの創業者、ジャック・ドーシー(Jack Patrick Dorsey)が、最初のツイートをNFTで保証して販売することを明らかにしている。
デジタル作品は今までは複製が可能なことから、美術品として価値がないとされてきたが、NFTで証明することにより、作品に希少価値をつけることが可能になったのだ。この技術は、美術界においては今後作品の所有者や所有歴の記録として使われることになると思われる。
それは必ずしもデジタル作品だけでなく、すべての伝統的な物性のある作品でも真贋の証明のためにも使われるようになるだろう。美術品だけではなく、不動産の登記や所有歴の記録として使われると予想されている。ビットコインと言う形だけではなく、様々なものの所有の証明のためにブロックチェーン技術はますます重要になるだろう。