バイデン大統領は、すべての米軍をアフガニスタンから9月11日までに、完全撤退させると発表した。
これはトランプ前政権とタリバンが合意した5月1日までの完全撤退を延長するものだ。トランプ前政権とタリバンの合意には、タリバンの囚人を5000人解放してこぎつけたものだが、それを延長するのに、どのような交渉をしているのだろうか。
いくつかの記事を読むにつれ、米軍の撤退は、何も達成されない中での行われると言う事は確かだ。現在のアフガニスタン政府は、都市部こそ支配を続けているが、農村部はタリバンの支配下にあり、各地で小規模な衝突が起こっている。アフガニスタン国内から、治安を維持するための米軍などの勢力が完全に撤退してしまえば、今後アフガニスタン政府とタリバンの内戦が長く続いていくのだろう。
そして、アメリカがこの戦争に踏み切ることになったきっかけは、2001年のアルカイダによるアメリカへの攻撃だ。この地域を基地にして、世界にテロを輸出していたテロ組織と共闘するタリバンを排除することが目的だったが、それは未達成だ。
アメリカの撤退により、タリバンの勢力が拡大すれば、ISやアルカイダなどのテロ組織が、また世界にテロが起こしてゆく可能性も否定できない。
アメリカ国内でも9月11日までに完全撤退をして、長い戦争を終わらせることに賛成している人が多い一方、アメリカの撤退によりタリバンの勢力が増し、今後世界においてのテロの横行を懸念する人は撤退を反対している。
バイデン政権の5月1日の期限を9月11日までに延長して駐留を続けると言うのは、そのような批判勢力に対する言い訳を作っているだけのようにも見える。
と言うのは5月1日を超えてアフガニスタンに駐留するアメリカ軍の部隊は3000人を超える程度と想定されている。それで、この4ヶ月ほどで何かが解決されることはない。もちろん現在の戦争は、無人機による攻撃・監視で現地の部隊がいなくても可能なこともあるが、実質的な治安維持と言う面では地上に部隊がいなければ効果は無い。
5月1日を超えて9月11日まで部隊を駐留させると言うのは、何か具体的な計算と言うよりも、感傷的なものを感じる。
あのニューヨークのワールドトレードセンターの崩壊から20周年を迎えるときに戦争終わらせたいと言う判断は、何かを達成するものではなく単なる感情的なものだ。真珠湾以降初めて攻撃を受けたアメリカは、怒りを持ってアルカイダの一掃を目的としてアフガニスタンに向かったわけだが、その前のソ連と同じく20年にわたる戦争を続け何も達成することができなかった。
思えば、40年以上前に、ソ連がアフガニスタンに侵攻して、西側諸国は、モスクワオリンピックをボイコットした。それから、ソ連やアメリカと言う駐留している外国人は変わったが、アフガニスタンではずっと戦争状態が続いている。
Netflixで見た「ホームランド」でも、ドラマであり撮影もアフガニスタンで行われたものではないが、民間人の犠牲者も含め死傷者がでる状況が描かれていた。
タリバンは、麻薬の輸出、テロ組織との連携、女性の迫害、公開処刑などを行い、その政策は外国人から見れば受け入れがたいものだ。しかし一方で、一部のアフガニスタン人からは治安維持や悪政を行う政府の排除などと面から支持されていると想像される。だからこそ、40年間も中央政府や外国軍と戦えるのだろう。
このような状況が、いつまで続くのだろうか。タリバンが完全にアフガニスタンを制圧し、タリバンの国になったときに、世界でテロを行うような、中東の北朝鮮として世界の不安定化の要因となるのだろうか。バイデン政権の完全撤退は、この40年にもわたる長い歴史の単なる1つの通過点で、問題は全く開発解決せず、今後もアメリカを含め西側諸国や周辺国はアフガニスタンとタリバンの問題に関わらざるを得ないのではないだろうか。