ロシアのクライナ侵略が始まって以来、原油から始まって小麦粉まで、あらゆるもの価格が高騰している。パンデミックにより過去2年間、様々なものの生産が停滞しているところへ、世界経済に対するダメ押しのような一撃である。
化石燃料から持続可能エネルギーへの転換の時期にあり、世界各国や企業が努力しているのは事実である。しかしながら、当面は化石燃料を必要としている。その最大の輸出国であるロシアをに対する経済制裁によりロシアからの輸入が途絶えた。しかもこの状況はへ100年とは言わずとも数十年は続くことが見込まれる。
持続可能エネルギーへの転換に際して、重要になるのはバッテリーである。そのバッテリーの重要な原材料はニッケルだそうだ。ニッケルの価格が1日で2倍になったことで、ニッケルの全世界の取引を扱うロンドン金属取引所は取引を凍結し、世界のニッケル市場は停止に陥った。これは、化石燃料依存から持続可能のエネルギーへの転換を大きな障害となる。
また、スマホを始めとする様々な生活必需品の中にバッテリーが使われている。中でも電気自動車は、バッテリーが最も重要な部品である。電気自動車のバッテリーには約40キログラムのニッケルが使われているそうだ。ニッケルの価格の高騰で、バッテリーの価格が2000ドル近くも値上がりしていると言う。
ロシアのニッケル生産量は比較的に小さいようだ。そしてそのほとんどはステンレスの製造に使われている。ロシアでニッケル生産会社を経営するオルガルヒの1人は、このニッケルの重要性のためか経済制裁の対象にはなっていない。そして、現時点ではアメリカもヨーロッパもロシアからのニッケルの輸入を止めてはいない。これはニッケルの重要性のために、ロシアからの輸入を止めるとバッテリーからステンレスまで多くの物の生産が止まってしまうからだと思われる。
ニッケルの価格は過去5年間1トン10,000ドルから15,000ドルからの間で推移してきた。それがロシアの位の侵略以降、1トン100,000ドル強まで高騰した。これでは、バッテリー生産に大きな影響がある。
また重要な金属であるパラジウムは、世界最大の出国であるロシアが世界経済から切り離されつつある今、自動車の排気装置やスマホに使用するために、価格が今後急騰するとみられている。
半導体不足で自動車などあらゆる商品の生産が停止に追い込まれている状況に加えて、重要な金属の不足によりこの状況がさらに悪化する。またそれにとどまらず地球の温暖化を止めるための、化石燃料からの脱却はますます難しくなる。
世界経済のグローバル化によって発展してきた冷戦終了後の世界はもはや存在しない。今後の世界は、ロシアを除外した形になり、そして同様の地政学的なリスクを考慮すると、中国のとの関係についても依存を避ける方向に、ヨーロッパやアメリカは動くのであろう。そういう意味で、第二次世界大戦以前のブロック経済の時代に逆戻りすることになる。当然日本も、その際には、日本も欧米ブロックの中に組み込まれることになる。
そのブロック経済圏では、中国はロシアと一体化するかどうか。多分、中国はロシアと距離をとろうとするだろう。その際には、ロシアを、プーチン後に世界の孤児にしない道を探すべきだ。そうしないと、第一次大戦後のドイツの二の舞になる。
今後の世界は、中国と欧米という大きなブロック経済で、資源や食品をやり取りすることになる。当然、資源や食品の供給量が少なくなり、また価格も上昇することが見込まれる。その結果として、当面の21世紀は世界経済の停滞期に入っていくのではないかと思われる。
今後の技術開発は、特にバッテリーも含めて、その経済圏の中で供給が可能な資源を使った製品の開発が進められ、理想的とは言えない形での技術開発が行われるのかもしれない。これはこれで人類にとっては非常に不幸な時代の始まりだ