巨大IT企業株価の下落

by Shogo

2021年8月時点の日経新聞によると、GAFAの合計株式時価総額は7兆500億ドルに達し、その時点の日本企業全体の6兆8600億ドルを超えていたという。それほどアメリカの巨大IT企業の株価は、市場からの信頼が高かったと言える。

しかしながら、ニューヨークタイムスによると、4月末時点で、今年に入ってからGAFA+ Microsoftと Netflixの6社の時価総額は、昨年に比べて2兆2000億ドル下落していると言う。比較の対象として、同じ企業の時価総額ではないので適切ではないかもしれないが、感覚的にIT企業への風向きが変わったことがわかる。

Googleの第一四半期が発表され、成長の鈍化が明らかになったように、他の巨大IT企業の第1四半期の発表でも、同様の結果が示されている。Amazonの第1四半期利益は対前年同期比7%の増加で、前年の成長率の44%にははるかに及ばない。このところ、2桁成長を続けてきたAppleも同様で、対前年比6%の成長にとどまった。Metaの第1四半期は7%増加。ただしFacebookのデイリー・アクティブ・ユーザ数(DAU)は前年同期比4 %増の19億6000万人となり、2021年第4四半期での初めてのDAUの減少から回復しているようだ。このユーザ数の増加を受けて、Metaの株価は第1四半期決算結果発表後に上昇した。ただし、昨年末の大幅な下落を多少回復したのにすぎない。

結論から先に言えば、この巨大IT企業への株価と言う、市場の信頼は揺らいでいるように見えるが、その理由はわからない。

考えられる理由の1つは、アメリカが金融の量的緩和を終了したことが引き金になっているのかもしれない。他には、2020年から始まった新型コロナウィルスによるパンデミックで、多くの活動のオンライン化が、日本以外の多くの国で規制が撤廃されたことで、過大なオンライン信仰が消えたのかもしれない。さらに、ロシアのウクライナ侵略に端を発した消費者物価の上昇も影響しているであろう。

また明確なことではないが、冷戦終結後の30年間の比較的安定した政治状況がロシアや中国と言う権威主義的国家の引き起こすかもしれない、今後の変化に対する政治的不安感もあるのかもしれない。

あるいは、インターネット普及やスマートフォンの普及に伴って、テクノロジーが社会を大きく変えていくと言う事について、多くの人が信じて疑わなかったことが急成長の根本にあり、今やそれが全て実現してしまい、これ以上の成長が考えられない段階に達したと言うことなのかもしれない。

学生から、スマートフォンの次のプラットフォームは何になるかと言う質問を受けて、答えられなかった。答えられないと言うより、考えもつかない。言える事は、Metaなどは、メタバースのようなVRやAR、AIを組み合わせた新しいインターフェイスを開発中だで、それが普及するかどうかはわからないと答えるのが精一杯だ。

とはいうものの、巨大IT企業の未来が、暗いと言う事は無い。現実に今までの急成長が多少鈍化したと言うだけで、第1四半期でも、利益を伸ばしている。単にパンデミックのオンライン化による大きなパーティーが1つ終わったと言う事に過ぎないのかもしれない。

だが、一つだけはっきりしているのは、侵略戦争が続く中、グローバルな安定した成長の夢はきえ、冷戦時代の核戦争の恐怖ではないにせよ、政治的・社会的な不安感を誰もが感じていることだ。

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