Z世代とTikTokは、最近のマーケティング界のバズワードとなっている。その両方にどう取り組むかが事業の成功に大きな影響がある。最近発表された、アメリカとカナダでのNHLのTikTokとのパートナーシップも、その多くの例の1つである。
Z世代という言葉は、アメリカの世代分類の言葉で、明確な定義はないが、1990年代半ばから2010年代生まれの世代を指す。現時点においては26 、27歳以下がZ世代と言うことになる。この世代はインターネットが普及した後で生まれ、スマホの普及とともに育ってきた。このためこの世代の特徴は、マスメディア離れが顕著で、ソーシャルメディアが、生活の要となっている。
アメリカにおいてはZ世代の重要性は、この世代が人口構成上大きいことである。アメリカにおいては30%を超えるシェアを持っている。このために、流行を作り出す若い世代と言うだけではなく、今後の消費の中心になる世代と言うことで重要視されている。残念ながら日本では少子化のために、この世代はシェアとしては20%に満たない。しかしそれでも、今後の消費の中心になる事は間違いない。
このZ世代に強く支持されているのが、TikTokである。2018年に国際版がリリースされた後、急速に普及が進み、2020年4月にはダウンロード数が20億回を突破した。最近の数字でもアクティブユーザ数は10億人を超えている。
日本でもZ世代を中心に人気を集め、最近の数字は発表されていないが、2019年2月に950万人の月間アクティブユーザ数が発表されている。現時点ではこの数は何倍かになっていると想像される。
2018年のリリース後は、15秒または60秒の短い動画が中心であったが、2021年7月からは最大3分までの動画が作成可能となった。
TikTokの特徴は、その編集機能の充実である。この短い動画を、TokTokが契約している音楽をつけた、ミュージックビデオのように作成できることである。これが、最初の突破口でダンスビデオなどが多く投稿された。その後、コンテンツは多岐にわたっている。
日経トレンディは、 2021年のヒット商品に「TikTok売れ」と言う言葉を選んだ。これはTikTokによって商品が売れた事例が数多くあったからだ。代表的な例としては、大塚製薬のファイブミニや 地球グミがある。
Z世代とTikTokの説明が長くなったが、今日の話題はTikTokのNHLのパートナーシップである。
NHLは昔から、すでに死語であるが、ヤッピーのスポーツと呼ばれ、MLB、NFL、NBAに比べると、都会に住む若いファンが多いと言うことで知られている。このためにNHLは、TikTokの世代を重要視しているようだ。2月にTikTokとNHLはパートナーシップを発表して、2月と3月のNHLのイベントの際には会場で、TikTokで人気のあるアーティストを招いたコンサート行った。そして、その模様をTikTokで配信し、TikTok、有名アーティスト、NHLの組合わせをZ世代に強く訴えた。
イベント以外でも、NHLのプレイヤーの普段着のファッションや日常生活を動画に作成し、ファンに対してプレイヤーの露出を図っている。これはスポーツ団体にとってもゲーム以外の新しいコンテンツとして注目される。
TikTokと組んだ動画は、NHLの若いイメージを作るブランディングとしても有効と考えられる。TikTokにおけるNHLのアカウントは170万人のフォロワーがおり、人気も高いことから、それらの動画の視聴回数も増加して億の単位になっている。
それにTikTok側でも、ファンが若いNHLは、魅力的で、2月と3月のイベントでも、氷の上にTikTokのロゴを表示したり、2020年から21年のシーズンでは、人気チームのトロント・メープルリーフのヘルメットスポンサーになっていた。これ以外では、TikTokのプロモーションは、知る限りない。それだけTikTokにとってもNHLは重要なパートナーと言うことになるのであろう。
人数が少ないとは言え、日本においてもZ世代とTikTokのマーケティングがおける重要性は当面変わらないと思われる。ここにどう取り込むかこの2020年代におけるマーケターの重要な仕事である。その意味で、野球やサッカーのチームが、TikTokと組んで何か行うということは面白いと思うがどうだろうか。TikTokとNHLのように、プレー以外の選手のコンテンツは、スポーツのプロモーションとして有効であろう。