田中長徳写真展「ウィーンとライカの日々」

by Shogo

田中長徳さんの本は、中国にいた頃にほとんど読んだ。多分その頃が、カメラそのものについての興味が一番あったことなのだろう。また、たくさんの古いカメラも買っていた。古い機械式カメラの趣味のバイブルが田中さんの本だった。特に印象に残っているフレーズは「カメラには、ライカとライカ以外がある」だ。

しかし、氏の数多くの著作の中で読んではいないのは「ウィーンとライカの日々」だ。当時から中古でも高値が付いていた。昨日確認したら、今では1万円を超える。今回の写真展のタイトルは、その本と同じ。本の写真のオリジナルプリントが展示されている。

御茶ノ水のバウハウスで行われているその本と同じタイトルの写真展に出かけてきた。会期もそろそろ終わりに近づいている。

やはり、もう少し早く行くべきだった。ウィーンが田中さんの写真により生き生きと記録されている。プリントも美しくて、良いモノクロプリントは本当に良い。それを改めて感じた。

バウハウスの1階に飾られているプリントは、本に使われた原稿用の一点ものの作品だそうだ。良いなと思ったものについては、やはり売約済みの赤いピンが付いている。珍しいのは、コンタクトプリントが額装されて売られていることだ。これも4点ほどあったが全て売約済みだった。壁に飾らないでも、手に入れてみたいと思ったが、残念ながら全て売約済みなので手に入らない。これは会期が始まった頃にバウハウスに出かけていれば手に入れたかもしれないのに残念だった。

ウィーンに行ったのは1度だけ。もう10年も前だ。ヨーロッパへの出張の際に何度かトランジットしたことがあるが、街中はその時だけ。田中さんの写真の中に見覚えのある場所が少し出てくる。ほぼ同じ場所を写真に撮っている。当然私の撮った写真とは違って、田中さんの写真のほうが、はるかに美しい街に見える。何が違うのかよくわからないが何かが違う。田中さんの写真だと思って見ているためなのだろうか。それとも、あのプリントだからだろうか。

70年代のウィーンはという事は、すでに50年近く時間が経っている。モノクロプリントはその時間を全て消し去るようだ。まるで田中さんがウィーンで昨日撮ったかのようにも見える。それは、田中さんのプリントの美しさと、ウィーンと言う古い街の歴史かもしれない。東京の50年前のモノクロプリントの写真を見ても、明らかに古さしか感じないだろ。田中さんのウィーンの写真には、光、影、コントラスト、階調の全てがあった。そのようなモノクロプリントは、時間を消し去るのだろうか。

雨が降ったりやんだりしていたので、御茶ノ水まで出かけて、カメラも持って行ったが、そのまま帰ってきた。夕方になって、やっと少し薄日が差す天気だった。読みかけの本を開いてゆっくり屋上で過ごす。

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