スポーツ放送権争奪

by Shogo

少し前にAppleで決まりと報じられていたNFLのサンデーチケットの契約は、まだApple、Amazon、Googleで争われているようだ。NFLのサンデーチケットは、地元のテレビ局では放送されない日曜日の他の地域の試合を放送する権利だ。今年まではディレクTVが持ってたが、次のシーズンから降りることが決まっている。それはディレクTVが、このパッケージから年間5億ドルの損失を計上しているからだ。

NFLは、このサンデーチケットを今までよりも10億ドルも高い25億ドルで販売しようとしている。しかもNFLネットワーク、RedZoneチャンネル、NFL +などの、モバイル端末で試合のライブ中継を視聴できる新しいサービスを含めて、セットで売ろうとしているために交渉が難航しているようだ。多分、Appleはサンデーチケットだけを25億ドルであれば契約をしていたのだろうが、他のサービスとのセットに難色を示しているのはではないかと思われる。そのため引き続きAmazonとGoogleとの交渉も続いているようだ。

サンデーチケットは、アメリカでは非常に人気の高いコンテンツなので、ディレクTVがなぜ年間5億ドルも赤字を出していたのかよくわからない。年間294ドルが、調達料金に対して安過ぎるのか、ディレクTVの顧客ベースが減少しているために十分な契約者が集まらなかったためなのか、あるいはその両方が影響してるのか。

今回の交渉で、Apple、 AmazonとGoogleの誰が勝者になろうとも、少なくともディレクTVの料金の年間294ドル程度、支払って契約者はサンデーチケットを見ることになる事は容易に想像できる。あるいは、それ以上かもしれない。放送権料が66%以上も値上がりするのだから仕方ない。しかし、これらのIT企業は契約者獲得のために大安売りする可能性も大きい。

AppleやAmazonを始めとするIT企業は、ストリーミングサービスの覇権を握るためにスポーツのコンテンツを買い漁っている。ストリーミング配信サービス最大手のNetflixは今のところスポーツコンテンツの獲得競争には参加していない。彼らはドラマや映画に集中している。

だが、一般的にはメディア事業では、スポーツコンテンツを中心に契約者を惹きつけるのは古典的な手法だ。

アメリカでは、日本と違ってケーブルテレビなどの有料放送の契約者は多かった。その数は2015年には1億世帯。しかし、ストリーム配信サービスがその顧客を奪って、従来の有料放送の事業者は、現在までに、その4分の1を失っていると言う

AppleやAmazonの戦略は明確で、コンテンツのポータルになることだ。すでに自社が配信するコンテンツ以外に契約者に追加料金を支払ってオンデマンドのコンテンツを見せるビジネスを行っており、契約者ベースが増えることによって、この追加収入も増えることが考えられる。これを行うためにはスポーツコンテンツを餌になるべく多くの契約者を集めることが必要だ。

Apple TV+は後発で2019年に開始されている。アメリカ国内の有料会員数は1,630万人で他社と比べると出遅れている。Amazon Prime Videoは2006年に開始され、契約者数は2億人を超えると言われている。

Apple TV+は、先日メジャーリーグサッカーとの契約を発表し1年間1,000試合をグローバルに配信することになった。この契約は、それまでのメジャーリーグサッカーの年間契約料の倍の10年25億ドル。またMLBの金曜日の2試合を放送する新しいパッケージに年間8,500万ドルと言う契約を行っている。Amazonも木曜日の夜のNFLの試合のために年間15億ドルと言う、巨額の契約を行った。

IT企業は、これまでのメディア企業と違うルールと契約金で放送事業に侵入している。一方、既存のメディア企業も自社のストリーミング配信サービスを開始し、激しい契約者争いが続いている。アメリカの他のスポーツリーグ、例えばNBAなども放送権争いの対象になるか、新しい権利を設定してストリーミングサービスに売却すると言うことも起こるだろう。またこのスポーツコンテンツの争いはヨーロッパにも飛びしていて、AmazonはUEFAチャンピオンズリーグの放送権も獲得した。イギリスのプレミアリーグも同様だ。当面このように既存のメディア会社とIT企業が、優良なコンテンツを求めて争うと言うことが続いていくことが予想される。

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