ハリケーン・カーターが死んだ

by Shogo

数日前にガルシア・マルケスが亡くなったが何か書こうとしているうちに日がすぎてしまった。大学生の時に「百年の孤独」を読んだが、この作家が今まで生きていたとは知らなかった。時間ができたら他の作品も読んでみなければと思う。

それでルービン・ハリケーン・カーターである。まさかこんなに早くと思ったが76歳だそうである。20年以上にわたって冤罪で刑務所にいたが、多くの支援者により冤罪は晴らされた。この事件を知ったのはボブ・ディランの歌「ハリケーン」で歌にも出てくるように十分な証拠もなく、黒人というだけで全員白人の裁判員により有罪にされた。アメリカの60年代には当たり前の話しだし、日本の袴田事件も同様だ。少し事情が違ったのは ハリケーン・カーターは世界チャンピオンがもうすぐの有望なボクサーだった。彼の才能を惜しんだ多くの人が支援を始め、それがディランの耳にも入り、あの曲を作ったのだ。

まるで見てきたようなリアリズムと畳み掛けるようなボーカルがハリケーンの運命を語る。イントロを聴くだけで緊張感を感じる曲だ。曲は大ヒットしたものの実際にハリケーンが釈放されるまで曲のヒット以降だけでも10年以上はかかっている。

ディランは初期にはプロテストソングの王子で、時代の代弁者と知られていたが、次第にそのようなラベルに耐えきれず、社会的な問題を歌うことはさけてきたように思う。それが一転、あの曲である。よっぽどこの事件に対しての憤りを覚えたのだろう。

釈放されて映画にもなったし彼自身も冤罪に悩む人を支援する仕事をしていたそうだが、どんな風に思っていたのだろうか。世界チャンピオンにもなれた男。曲の歌詞にも出てくるが、苦しかったことだろう。それでもディランが作った曲だけではなく、忘れ去られない人物となったことは間違いない。たとえマルケスのようにノーベル賞をとっていなくてもアメリカの闇と光を体現する人物としてこれからも記憶されるだろう。

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