かつてバブルのころには、世界中のクレーンが東京に集まっているといわれ、あちらでもこちらでもビルの建設が続いていた。土地の値段は上がり続け、東京のオフィスも住宅もすぐに枯渇すると信じられていた。
バブルの崩壊を経て、そのクレーン群は海を渡り、上海や北京で数多くのビルの建設が続いている。東京を含めた日本の地価は落下を続け、かつてはアメリカを4回も買えると言われた日本の土地の総額は見る影もなく小さな数字になった。これは株も同じで、実態のない高い地価は落語の花見酒のように実質的な価値を生まず、むしろインフレとバブル崩壊後のデフレに苦しまされる結果だけ生んだ。
それでも景気の失速中にも関わらず、東京の街は変わり続け、新しい建物は、昔ほどではなにせよ建設が続いている。スカイツリーや渋谷のヒカリエが今の代表だろう。先日、渋谷に行った際に見上げるような高層ビルになっていて驚いた。昔のプラネタリウムのビル、薄汚れた東急文化会館の3倍の高さはありそうだ。スカイツリーもヒカリエも確か4月には完成のようだ。
他の代表は、来年開通予定のマッカーサー道路周辺だ。道路の建設に合わせて周辺ではビルの建築が続いている。開通後には虎ノ門から汐留の景色が変わるはずだ。先日通りかかった時に遅い午後の光にクレーンが印象的だった。この100メートル道路が完成して周辺に高層ビルが建つと、虎ノ門から汐留までまったく新しい街が出来上がるのだろう。
そういう建設現場を見ていると、大企業の巨額の赤字や名門企業の外資導入など暗いニュースばかりで先行きが不安なことが間違っているような気もしてくる。まだまだ、上海や北京と比べても大きく遅れをとっている訳ではないかもしれないと思い始めたら、現実逃避だろうか。
間違いなく、財政赤字や景気の不調、日本経済全体のガラパゴス化とか問題は実在する。でも、実際はどちらが正しいかというと現実は均質ではなくあちこちに斑があって良いところと悪いところが併存するのが世の常のような気がする。だから、これからも問題だ問題だと言いつつ、良い部分も出てきて全体的には少しずつ沈んでいく。何か自分の生活のようだ。
今回、マッカーサー道路をwikiで調べて見たら意外な事実を知った。実際は、関東大震災後に後藤新平が計画し、その後中止になったが、戦時中の防火対策の一環として計画が息を吹くかえしたらしい。だが、戦後になってマッカーサーの占領軍が反対してまた中止になった道路ということで、マッカーサーが計画したというのはデマのようだ。でも、一般的はマッカーサー道路と呼ばれてしまっているのが現実だ。