アメリカの連邦食品医薬品局(FDA)が、疾病の発生を抑制するために、パッケージ食品に許可されている「健康的」と言う表示の基準を見直すと発表した。食品のパッケージなどよく見ていないので、アメリカにいたときに「健康的」と表示があったかどうかはよく覚えていない。多分見たとしても、単にパッケージデザインの1つと思っていたのかもしれない。
アメリカで「健康的」と表示されているのは、パッケージ食品の全体の約5%だそうだ。これは1994年に定めた基準に基づいて許可されている。総脂肪、飽和脂肪、コレステロール、ナトリウムの量を制限し、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄、タンパク質、食物繊維のうち1つ以上の栄養素を1日の摂取量の10%以上摂取できる製品であれば、「健康的」と言う表示が許されている。海鮮食品、狩猟肉、生の果物や野菜は別の基準がある。
1994年に定められた基準を2016年に、総脂肪を多く含む食品を認めるとともに、ビタミン Dまたはカリウムの1日の推奨摂取量の10%以上を摂取できるものを含めた。
しかし、上記の「健康的」の基準には、砂糖が全く含まれていなかった。今回この砂糖とナトリウムの摂取量制限値を基準値として「健康的」の定義に含めるようだ。
新たな基準では、砂糖の摂取量に制限を加える。例えば170グラムのヨーグルトの場合、1日の摂取量の5%にあたる2.5グラム以上の糖分を含むと健康的と表示ができなくなる。これはつまり、FDAの基準では1日の糖分の摂取量が50グラムと言う事のようだ。一般的にコーヒーに入れるスティックシュガーは、3グラム程度と言うことなので、1日16本分と言うことになる。
また単純に砂糖の摂取制限だけではなく、新しい「健康的」の定義によれば、野菜、果物、穀物、乳製品、タンパク質、植物油を含む特定の油の組み合わせを推奨している。「健康的」とみなされる食品は、これらの食物群のうち少なくとも1つを最低限量含み、脂肪、飽和脂肪、ナトリウム、砂糖の制限値以下であることが必要となると言う。また、今回の定義では、今までは「健康的」の対象外であった生の野菜や果物も対象となっている。
今回のこの「健康的」の定義の基準の変更により、膨大な数のパッケージ食品が、「健康的」と言う表示を外さなければいけなくなるようだ。
アメリカの食品一般的に言えるが、砂糖がたくさん含まれており、甘いものが多い。具体的には、シリアル、グラノーラバー、ヨーグルトなど多くのパッケージ食品が、「健康的」の表示からは排除される。
しかし、それにしても「健康的な」と言う定義は、個人差がずいぶんあるのにもかかわらず、一律に「健康的」と言う表示を認めるのには大きな問題がある。それは、砂糖、塩、飽和脂肪についての制限が加わったとしても同じだ。年齢や体型、病気の有無などによって、どのような食品をどの程度取れるかは、人によって大きく違う。それを一つの基準で「健康的」と推奨するのには問題がある。
アメリカの食べ物は大体甘いものが多い。その結果が肥満を始めとしてアメリカでの心疾患系疾患や糖尿病の発生につながっている。今回も基準を変更するのではなく、全体的に砂糖の摂取制限のキャンペーンを行う方が良い。そもそも、公的な機関が「健康的」と表示することを許してはいけないのではないだろうか。
ただ、この問題についても、食品業界の強力なロビングによって連邦政府は圧力を受け、そのような抜本的な改革はできない可能性がある。資本主義社会の歪みと言えば、大げさだが、パッケージ食品業界は巨大であり、政治を動かしている事は間違いないのであろう。
日本には「健康的」と言うような表示を許可する制度はないと思う。日本にあるのは、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品だけだと思われる。普段よく見かける表示だが、全く知らなかったので調べてみると、トクホは消費者庁の許可マークで、最終商品でヒトでの有効性、機能性、安全性の評価が行われていると言う。一方、機能性表示食品は、誰の審査も受けず有効性、機能性、安全性を科学的に証明する根拠があれば良いそうだ。これは事業者の一方的な判断で誰の審査も受けていない。
このようなことを見ても、健康的だとか機能性食品とかあまりパッケージに書いていることを信じない方が良いと言う結論になる。