大谷翔平が9月17日に故障者リストに入り、今シーズンの残り試合に出場しないと発表された。それ以来、本人の気持ちを考えると自分も辛いので大谷翔平の事は考えないようにしてきた。ちょうど、ラグビーワールドカップが始まったこともあり、Japanの応援のために、フランスに行っていたこともあり、あまり考えずに済んできた。
ラグビーワールドカップでは、想定通りにアルゼンチンはチリに快勝して、10月8日のJapanとの直接対決により、どちらかがグループDの2位チームとして準々決勝に進む。試合の組み合わせそのものが、そのように組まれていると言ってしまえばその通りで、プールラウンドの最終日には興味深い重要な試合が組まれている。日本やアルゼンチンが入っているグループDがそうで、どちらもグループの中の最強チームであるイングランドと試合は早めに組まれている。そしてプールラウンドの最後の日にアルゼンチンと日本の試合と言うことになる。2019年大会で言えば、2019年10月13日の日本とスコットランドの試合がそうだった。
その話はさておき、大谷翔平だ。今シーズンは打者として135試合に出場して打率.304、ホームラン44本、95打点、20盗塁、出塁率.412、OPS 1.066を記録している。OPSは、長打率と出塁率を組み合わせた数字で、マネーボールのビリー・ビーン以来、打者の評価として重要な指標となっている。投手としては、23試合に先発して132イニングを投げ、メジャーでの初完投・初完封を含む10勝5敗、防御率3.14、167奪三振を記録している。
ホームラン王に関しては、アメリカンリーグ2位の38本塁打のルイス・ロバートが10日間の故障者リストに入り、やはり今シーズンを終えた。大谷翔平の44本に6本差まで迫り、どこまで追いかけるが注目されていたが、これも残念なことに38本塁打に終わっている。3位のレンジャーズのガルシアの37本、4位のヤンキースのジャージの35本がどこまで大谷翔平に迫れるか。残り試合を考えると大谷翔平がホームラン王になる確率はかなり高い。
また、大谷翔平のシーズンは途中で終わってしまったが、数々の記録から、2021年以来、2年ぶりの2度目のMVP受賞も確実と予想されているようだ。
大谷翔平の事は考えずにいたが、今朝起きて、NYTの一面に大きく、大谷翔平の写真が現れた。記事のタイトルは、「大谷翔平の不可能、比類ない、ほろ苦いシーズン」。その記事は大谷翔平が44号ホームランを放った日の試合の事から始まっている。初回に特大のホームランを打った後、投手として完璧な働きをした記述が続く。この記事の中で、投手として、同時に打者として傑出したプレーを見せ、あらゆる指標でトップに立つ大谷翔平を、カルフォルニアでのハリケーンと同じほど珍しい現象であると書かれていた。
さらに、今シーズンの大谷翔平について、3月のワールドベースボールクラシックから始まり、野球史上最も注目に値するプレイヤーとして最高のシーズンとなっている記述が続く。この辺まで読むと、今シーズンが途中で終わってしまったことを考えて、また残念な気持ちになる。歴史にもスポーツにも「もし」はないが、もし怪我をしていなければ、どれほど偉大なシーズンとなったことであろう。
怪我については、エンジェルスのジェネラルマネージャー、ペリー・ミナシアンは投手と打者の二重の負担が怪我の原因になったと言うことを否定している。しかし多くの関係者は同じようには考えていない。
大谷翔平のエンジェルスのとの契約は今シーズンで満了となる。今回の怪我と、投手と打者の二刀流の負担を各チームが、どのように考えて大谷翔平にどのようなオファーをするのか、現時点ではまだ不明だ。投手と打者のどちらか一方でも超一流のプレーヤーであることは間違いないからだ。どのようなオファーがあり、それに対してどのような決断を大谷翔平がするのかも不明だが、二刀流が許される球団を選ぶのは間違いないであろう。
現時点では投手としての復帰は2025年の4月と考えられているようだが、できれば、エンゼルスより選手が揃った、もう少し強いチームで活躍してくれることが、10月8日にJapanが勝つことを祈るのと同じように、今の関心事だ。
スポーツのプレーは、その最高点では、限りなく美しく崇高でさえある。そしてそれは大谷翔平の怪我に象徴されるように、いかに鍛えられたといっても、人間の体によってなされると言う脆さも併せ持っているように思われる。それは、ラグビー選手が試合終了後に観客に挨拶するために、会場を歩く際の歩き方を見ればよくわかる。どれほど体を犠牲にして、プレーやチームのために全力を出し切っていることか。その完璧な美しさと脆さもと言う、スポーツの最も偉大な頂点を今シーズンの大谷翔平が見せてくれたということなのだろう。