OpenAIが同社の価値を800億ドル以上とする株の売却取引を進めているそうだ。新株を発行するのではなく経営者などが持つ既存株の売却のようだ。この800億ドルと言う評価額は、テクノロジー企業としてByteDanceやSpaceXと同じレベルの企業価値を持つことになる。
OpenAIが、昨年の11月にChatGPTを発表して以来、AIブームがやってきた。Microsoftは1月にOpenAIに対して100億ドルの追加投資をして、現時点までMicrosoftの投資額は130億ドルになっている。2月にはThrive Capital,やSequoia Capitalなどの大手のベンチャーキャピタルが投資を行い、その2月の時点でOpenAIの評価額は290億ドルだった。それが今回は800億まで評価価値が上昇したということだ。
OpenAIのChatGPTが公開され、ChatGPTが質問に答えたり文章を書いたり、コンピューターコードを生成することができたために多くの人を魅了した。この結果、各社がチャット型のAIツールを公開してAIツールが市場に溢れた。具体的には、Google BardやChatGPTをエンジンとして使うMicrosoft Bingだ。これ以外に数多くのツールが公開されている。
ChatGPTがブームになったおかげで、AIツールが一般的なものになった。OpenAIは今年の初めにユーザが1億人に達したことを発表して以来、現在までユーザ数を発表していない。有料版のChatGPT Plusについても契約者数の発表も行っていない。ChatGPTの機能のアップグレードや画像生成ツールのDall-E3を組み込んで画像生成までできるようになった。このために、数字は発表されていないがユーザ数は急増している事は間違いない。
しかもMicrosoft BingはChatGPTをエンジンとして使っている。大口の株主である。Microsoftとの間でどのような使用契約が結ばれているかわからないが、ある程度Microsoftからの使用料も受け取っているのではないかと見られる。このユーザ数も相当だろう。
ChatGPTがブームになったおかげで、固有名詞が普通名詞になった「宅急便」や「ホッチキス」のようにChatGPTがチャット型AIツールの代名詞として使われるようになった。今後、広く活用されるAIツールのトップランナーだ。ネットでは、勝者総取りの現象が見られるので、OpenAIの地位は揺るがないだろう。だから、今は800億ドルの価値があり、今後もそれは増加することは間違いない。
ChatGPT公開以来、多くのサービスや製品がAIツールを組み込むことを開始しており、2023年はAIツールの年になった。そのおかげで昨年は話題だったメタバースやNFTの話題はどこかに行ってしまったようだ。
しかしながら、AIツールが一般に使われるようになると、ハルシネーションと呼ばれる不正確あるいは無意味な回答の問題も話題になっている。Google BardやMicrosoft便も不正確な情報を回答してしまうこともよくあり、その特定の話題に知識を持たないユーザはそれによって誤解をすることになる。
ハルシネーションの問題は大きく分けて2つの原因があるようだ。1つはAIモデルをトレーニングする際のフィルタリングされてない大量のデータだ。 それらの情報は、フィクション、誤情報、ソーシャルメディアの意図的な誤った情報やヘイトスピーチを学習してしまうことにあるようだ。AIモデルはそれらの情報をそれらのフィクションや誤情報を真実と信じ込んで学習していることから、それに基づいて誤った回答してしまう。
もう一つの理由は、AIツールへの質問であるプロプトを正しく処理する方法が組み込まれていない場合、ユーザが曖昧な形のプロンプトで質問してしまうと、結果としてあまり正確でない回答を返す可能性がある。
このような問題に対応するために、Microsoftは9月に従来の一般的なウェブから集めた情報ではなく、内容吟味されたデータでトレーニングされたAIツールのFil 1.5モデルを発表している。今後は、同様の対策が取られるだろう。
ハルシネーションとは直接関係ないが、小説家や脚本家などがAIツールの学習に著作物が使われる事は著作権違反だとして訴え起こしている。
このように、今後ハルシネーションに対応するためにAIツール開発事業者は学習に使うテキストのデータについてランダムにウェブから集めるのは難しくなるだろう。
このAIツールの普及は、まだ始まったばかりであり、今後確実に社会に浸透していくために、ハルシネーションの問題は近い将来には解決されるのではないかと考えている。