消費者庁はステルスマーケティング(ステマ)行為を行ったとして、大田区の医療法人に対して景品表示法に基づく措置命令を出した。ステマ規制違反に対する措置命令は初の事例だ。2023年10月1日より、景品表示法に基づく新たな規制が施行され、いわゆるステマが不当表示として禁止されるようになっている。
この医療法人は、運営するクリニックにおいて、2023年にインフルエンザワクチン接種を受けに来院した患者に対し、Googleマップの口コミ欄でクリニックの評価を星4つ以上とすることを条件に、接種費用を550円割り引くことを持ちかけていたという。これにより投稿された高評価の口コミ45件について、消費者庁は、広告・宣伝であるにもかかわらずそれを隠して投稿されたものだとして、ステマに該当すると判断。投稿の削除と再発防止を命じた。
ステマとは
企業が消費者に対して、広告や宣伝であることを隠して行うマーケティング手法。具体的には、以下のような事例がある。
- やらせの口コミ投稿 企業が報酬を支払ったり、商品を無料で提供したりする代わりに、消費者に自社の商品やサービスの良い口コミを投稿させる行為。
- インフルエンサーによるステルス広告 企業がインフルエンサーに依頼し、広告であることを明示せずに商品やサービスを紹介させる行為。
- サクラを使ったイベントやキャンペーン 企業が自社の商品やサービスを盛り上げるために、サクラを雇ってイベントに参加させたり、キャンペーンに応募させたりする行為。
- 記事広告の偽装 広告記事であることを隠して、通常の編集記事のように見せかける行為。
ステマは、消費者が広告と気づかずに情報を受け取るため、通常の広告よりも信頼性が高いと誤解されやすいという特徴がある。だから有効だとも言えるが、消費者を欺く行為として問題だ。この手法は、インターネット登場前から一般的に行われてきた。店舗開店でさくらを並ばせたり、記事の体裁を取ったような広告手法だ。だが、これは現在では、多くが違法だ。
景品表示法によるステマの規制
景品表示法は、優良誤認表示や有利誤認表示に加え、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(ステマ)を禁止している。この規制は、事業者がインフルエンサーや第三者を介して行う広告表示にも適用され、広告であることを明示しないまま行うすべての広告活動が対象となる。
消費者庁は、ステマ規制に違反した事業者に対し、措置命令を発令し、違反行為の差止めや再発防止を命じる。また、措置命令に従わない場合、事業者には2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性がある。
企業はステマ規制に抵触しないよう、広告であることを明確に表示する義務を負う。インフルエンサーやアフィリエイターに依頼する場合でも、広告である旨を明示し、消費者に誤解を与えないよう配慮する必要がある。しかし、これが完全に行われているかどうかに疑問もある。今回の事例から学んでステマを行なわないように注意をした方が良い。
措置命令を受け、企業名が公表されると、企業イメージに大きな話題に影響を受ける。そのような事態にならないためには企業での管理のプロセスの管理も重要だが、社員教育も重要だろう。
今回の医療法人のように措置命令を受けていないが、最近のパナソニックのミラーレスカメラ「LUMIX DC-S9」のサイトに撮影例として、フォトライブラリーから借用した写真を掲載した事例がある。この別のカメラで撮影した写真を撮影例として使用する行為は、今回の事例よりも悪質だ。このような消費者を欺く行為は厳しく非難されるべきだろう。このパナソニックの事例が景品表示法に違反するかどうかの判断は、私にはできないが、措置命令を受けた事例より問題だ。このような広告活動を実行する前に、施策がステマや消費者を欺く行為にならないかを検討するような社員教育が必要だろう。