Apple Musicがスーパーボールのハーフタイムショーのスポンサーに

by Shogo

Apple Musicが、ペプシに変わってNFLのスーパーボールのハーフタイムショーのスポンサーになることが発表された。契約金額は発表されていないが、5,000万ドルの5年契約、合計2億5,000万ドルと報道されている。

NFLスーパーボールハーフタイムショーはテレビで、最も見られているショーだ。2022年のショーでは、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、エミネム、メアリー・J・ブライジ、ケンドリック・ラマーが出演した。結果は、平均1億340万人の視聴者を記録している。

スーパーボールのハーフタイムショーと言うとペプシの印象が強い。実際に2022年まで10年間契約をしていたし、それ以前にも何度もスポンサーになってきている。しかし、ペプシは、「戦略転換」としてスーパーボールのスポンサーシップを降りた。多分、テレビで放送される番組より、デジタルメディアを使って、重要なターゲットである若者にリーチしようとしているものと思われる。

今までも、スポンサーとして、ハーフタイムショーの特別アプリを立ち上げたり、舞台裏の映像等のコンテンツを公開するなど、インターネットを使って、ハーフタイムショーのコンテンツを最大限に生かそうとしてきた。しかしながら、ペプシにとっては、大きな予算がテレビという既存メディアに縛りつけることをもはやできないと言うことだなのだろう。

そこで登場するのがテクノロジー企業のAppleと言うことになる。資金が豊富と言うこともあるが、既存のメディアに集まる視聴者を自社のサービスに誘引するために、テレビなどのメディアを使う。これは、テクノロジー企業に多く見られるマーケティング手法である。従来テレビを使ってきた飲料企業がデジタルにシフトし、テクノロジー企業が既存メディアに投資。考えてみれば面白いものだ。

しかしこのApple の動きは、マーケティング上の戦略ではなく、もう少し別の狙いがあるようだ。それについては後で述べる。

Appleは、滅多にスポンサーシップを活用して来なかった。以前の例としては、Apple WatchのプロモーションのためにMET Galaのスポンサーになったことぐらいだ。それぐらいの例外的な動きをする理由がある。

それでも、Apple Musicのスーパーボールのハーフタイムショーのスポンサーシップは、マーケティングの観点からは大きくハズレてはいない。

ひとつは、Apple Musicの現状だ。Apple Musicは2021年のデータで、音楽配信市場の15%のシェアを持っている。しかしSpotifyの31%に比べて大きく出遅れた。これは、iPod発売時のiTunes Music Storeで配信市場を大きく革新したAppleにすれば不本意な結果だろう。しかも3位のAmazon MusicとTencent Musicは13%と、Apple Musicに迫る勢いだ。5位のYouTubeMusicも8%で追いかけている。このような状況の中でApple Musicはさらにマーケティング予算を投下して契約者を拡大する必要がある。そのための人気の高いハーフタイムショーということになる。

さらに、Apple Musicとハーフタイムショーは良い組み合わせでもある。もちろん多くの視聴者の耳目を集めると言うことでは有効であるが、それだけではなくハーフタイムショーは音楽を中心の番組・イベントであるために、その出演者を含めた様々なコンテンツをApple Musicで制作をし、既存や潜在的な契約者を誘引することができるからだ。

ただし、それが2億5000万ドルに値するかどうか判断が分かれるところだ。ハーフタイムショーと言うテレビ番組であり、高年齢の視聴者が多いことを考えると、Apple Musicがより求めているもっと若い世代へのリーチは多く期待できないかもしれない。

それでもハーフタイム上のスポンサーになるのは、AppleにとってApple TV+と言う別のアジェンダがあるからだ

NFLはメディア戦略を変えて、既存のテレビ放送から配信へ移行しようとしている。Thursday Night Footballの放送権をAmazon に11年契約で売却した。そして、NFLの最大の資産である、日曜日の放送の放送、Sunday Ticketの放送権を既存の契約先のDirecTVからとの契約を終え、配信企業に売却しようとしている。

これに興味を持っているのはGoogle、Amazon、ESPN、Appleと言われている。しかしその契約金はDirecTV との契約の15億ドルよりも10億ドルも増加する25億ドルである。多くが二の足を踏む中で、それでもAppleは精力的にNFLとの交渉を続けている。CEOのティム・クックなどの幹部が、有力なNFLのチームのオーナーと会ったりして交渉しているそうだ。

それは、Apple TV+が、「The Morning Show」や「Ted Lasso」と言うような高い評価の番組がある一方、契約者の獲得には苦労しているからだ。Apple TV+は、米国内で契約者数がまだ1,600万人で、3年前の同時期にスタートしたDisney+の半分にしかならない。

そのために契約者獲得の切り札として、NFLのSunday Ticketの放送権をどうしても契約したいと言うことのようだ。

今回のスーパーボールのハーフタイムショーのスポンサーシップの契約もその文脈の中で出てきたものと思われる。これが、Sunday Ticket獲得の条件なのか、獲得につながるのか注目される。

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