あらゆるコンテンツの中で、リアルタイム性が最も重要なのはスポーツである。それを今回のWBCで身に染みて体験した。決勝の日に移動しなければいけなかったので、泣く泣くテレビの前から出かけた。WBCはテレビで放送されていたが、Amazon Prime Videoも配信を行っていた。だから、あの緊張が続く試合をスマホでずっと追いかけることができた。電波が途切れる時間があったので、その時間だけは仕方がないが、それ以外の時間はずっと試合を見ることができた。周りを見てみると、同じように、たくさんの人がスマホで試合に見いっていた。9回裏の、最後に大谷がマイク・トラウトを三振にとる場面は、まだ目的地に着いていなかったので、路上で歩きながら見た。これが可能だったのは、Amazon Prime Videoのおかげだ。
このようなことがあるので、ますます映像配信にとっては、ライブのスポーツが重要なコンテンツになる。
映像配信事業者の中では、スポーツのライブ中継に積極的に取り組んでいるのは、AmazonとAppleだ。Netflixはスポーツの放送権の高騰を理由に投資に見合わないと判断している。しかしながら、AmazonとAppleは本業の潤沢なキャッシュフローもあるために、短期的な収支の均衡など考えていない。それぞれのサービスの契約者を増やす中核となるコンテンツとしてスポーツを考えている。
Amazon は、NFLの「Thursday Night Football」の独占権に2033年までで110億ドル支払っており、日本でも今回のWBCや、様々な格闘技の配信権を獲得している。Appleも、Apple TV+でスポーツのコンテンツ獲得に動いている。アメリカのメジャー・リーグ・サッカー(MLS)の独占配信権を10年間25億ドルで獲得しているし、MLBについても配信権を獲得している。Amazonが、アメフロなら、Appleはサッカーでというような動きだ。
また、アメリカでは人気のある大学スポーツの西海岸の大学リーグのPAC-12の放送権に興味を示しているようだ。このPAC-12については、AmazonやDisneyも興味を持っており、何社かの入札になる見込みだ。
そして今回ブルームバーグが報じているのは、AppleがイギリスのプレミアリーグとEFL、イギリスのプロサッカーリーグのプレミアリーグの1つ下のディビジョンの放送権を狙っていると言うものだ。現在、プレミアリーグのイギリス国内の放送権は、 Sky、BT Sports、Amazonが契約をしており、現時点の契約は2022年から2025年まででの3年間で契約金は63億ドルだそうだ。さらに、Appleはプレミアリーグだけではなく、下のEFLの放送権の獲得も視野に入れていると言う。EFLの放送権は2024年以降は新たな契約期間に入り、そこでAppleが入札に参加する可能性が高いとみられている。
プレミアリーグのアメリカ国内での放送権は2022年に入札が行われ、Appleも参加するとみられていたが、参加せず、最終的にはNBCが獲得している。
報道ではApple TV+で配信されている、イギリスのサッカー界を舞台にした「テッド・ラッソ」が現実になるとニュースに味付けをしている。「テッド・ラッソ」は、アメフトのコーチがイギリスに行ってサッカーチームを立て直すコメディーだ。Apple TV+を契約していた時期に少しだけ見たが、個人的にはあまり面白くないので2話程度しか見ていない。しかし、一般的には人気があって、もうすぐシーズン2も公開されるようだ。
Appleもサッカーのコメディーがヒットしたから、サッカーのコンテンツを獲得しようとしているわけではなく、長期的に若い消費者をグローバルに獲得するときに、サッカーと言うコンテンツは外せないと考えているのであろう。
今回のブルームバーグの記事がどれほど正確なものかもよくわからないが、MLSの独占的な配信権を獲得したことから、サッカーに興味を持っていること自体は確実だ。
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