写真の定義と著作権

by Shogo

2022年9月にMidjourneyにて作られた絵がコロラド州の美術コンテストで優勝したというニュースを聞いてて、画像生成AIに興味を持った。そしてMidjourneyとDALLA-2のアカウント作って触り始めた。ゼロから画像を作るのではなく、自分の撮った写真の加工用に使っている。

その後生成される画像のクオリティーの高さからMidjourneyだけ使うようになり、最近Adobe Fireflyが登場して、少し触ってみたがやはり画像のクオリティーからMidjourneyだけになっている。

この広島サミットの長い週末の間に、久しぶりにMidjourneyで写真を加工してみた。しばらく使っていなかった間に、バージョンが5.1になり、さらに画質が向上していた。生成される画像によっては写真のクオリティーと区別がつかない。それでいて、似てはいるが、全く違う写真が生成される。

面白いのは、まるでガチャのように全く違う要素が含まれてくることだ。これはアルゴリズムの中に何らかのランダム性が取り入れられているものと思われる。

Midjourneyで作られた作品が、コロラド州の美術コンテストで優勝して以降も、Sony Photography Award 2023でも、どのプログラムか明らかにされていないが、AI生成画像が最優秀賞を受賞した。応募の時点では、AI生成画像であることをあきらかにしていなかった。その後、応募者は受賞を辞退している。Sony Photography Awardの受賞作品は、コロラドの美術コンテストの絵画のイメージ違って、写真と見分けがつかない。審査員が、写真と思って審査したことを責められないクオリティだ。


さらに、今年1月には、フォトジャーナリストがキューバ難民のAI画像を生成してNFTのアートワークとして販売したことで非難を浴びている。発表された画像には、この画像は本物ではありませんと書かれているが、その画像そのものは写真と変わらないのように見える。


Photoshopなどの写真加工技術が発達してきて以来、世界報道写真展やピクチャー・オブ・ザ・イヤーなどのコンテストでは、受賞者に写真のRAWデータの提出が求められている。加工がないかを確認するためだ。つまり、現時点では、まだ写真は現実をそのまま写したものではいけないと言う、今までの既成概念によって成り立っている。

しかしながら、そもそもカメラは科学技術そのものであり、様々なカメラは光を取り込んで、そのイメージを結像させることによって写真と言われてきた画像が成り立っている。フィルムの時代であれば、感光剤に反応して変化を起こし、それを化学的に定着することで写真が作られたと言う原理は理解している。しかし、デジタルカメラになるともはや理解不能だ。カメラのフィルムに当たる撮像素子の半導体の種類によっては、生み出される画像の色や雰囲気など大きく違う。つまり、現実を映し出しているのではなく、科学技術にとって作られた機器が現時点で写真と呼ばれるものを作り出しているので、すべてがブラックボックスの中にある。


これと軌を一にして、今まで写真と言われてきたものは大きく変わってきた。何年も前にスティーブ・マッカリーが写真を加工したことによって大きな避難を受けた。その時点では、写真とは加工をしてはいけないものだったからだ。しかしながら、今では権威のある写真コンテストでも加工された写真は当然のこととして、受け入れられ受賞作品となっている。

そうなってくると、Midjourneyなどの画像生成AIによって生み出された画像と、デジタルカメラを使って生み出された画像との違いは無い。むしろ、画像生成AIの方が予想もしないものが生み出されるだけ、驚きに満ち、想像力をかきたてる部分がある。21世紀の初めまで写真家は光を読んでカメラという技術を使って画像を作り出してきた。そして今後写真を作り出す人は、日本語で「呪文」とも訳されるAIに与える画像生成のためのPromptを生み出すアイディアを使って画像を生み出す。

実際にをMidjourneyを使いながら、様々な言葉をプロンプトにすると、驚くほど違うものが生まれてくる、それがまたランダムであるために余計面白い。これからは、油絵と水彩絵の画家のように、カメラと画像生成AIを使う写真家の時代になる。


現時点で問題になっているのは、画像生成AIが作り出す画像の著作権だ。Chat GPTのような言語生成AIもインターネット上の様々な文章から学んで言葉を作り出している。画像生成AIもネット上の様々な画像を読み込んで、それをベースにして画像を生み出している。この元の画像から生成された画像の著作権の問題は、現時点ではまだグレーのままだ。
2023年の1月に3人のイラストレーターが、複数の画像生成AIサービスの企業に対して訴訟を起こした。これは実在するアーティストのスタイルで画像を生成した場合には、著作権と不正競争防止法に違反するとの主張だ。

確かにMidjourneyでも実在する写真家やアーティストのスタイルで画像を生成するように指示することができる。これが著作権違反になるのかどうか。仮に違反しているとするとすれば誰が違反しているのか。画像生成サービスを提供している企業なのか、その実在のアーティストの名前をプロンプトして使用した利用者か。Winnyの裁判のように、サービス提供会社が著作権違反幇助罪を問われるのか。


日本では定着していないが、アメリカでは「フェアユース」の概念があり、元の著作権を適正な形で使った場合には、著作権違反にはならない。画像生成AIの元画像の読み込みは、「フェアユース」になるのかどうか、今後議論が進むであろう。

画像は、Midjourneyで加工したローマの写真。この写真の場合は、元画像の著作権者は私だが、取り込まれた要素は、インターネット上の誰かの写真やイメージをMidjourneyが混ぜ合わせている。

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