イーロン・マスクが、日本時間の昨夜遅く、「もうすぐ、Twitterブランドにさよならを言って、徐々にすべての鳥を消していく」とツイートした。そしてそのツイートの直後に、「(新しいブランド名の)良いXのロゴが投稿できれば、明日、全世界でブランドを切り替える」とツイートしている。
イーロン・マスクは、Twitter買収の際に、Twitterをソーシャルメディア、インスタント・メッセージング、決済サービスなどのすべてのサービスを統合する新しいアプリに作り変えると発言していた。そして、その際にXと言う名前も明らかにしており、Twitterの会社の名前はX Holdingsに変更されている。
イーロン・マスクは、「X」という文字に深い関心を持っているようだ。1999年には、ネット銀行としてX.comを共同設立し、それを別のスタートアップと合併してPayPalを立ち上げた。その後、2017年には、PayPalからX.comのドメインを購入して、彼のドメインとして登録されている。
スーパーアプリをTwitterベースに作ろうとしている事は有名な話だった。しかしその際にTwitterのブランドを完全には廃止するとは思っていなかった。このブランドの変更に関して言うと、2つの対立する意見がある。
まず、最初にネガティブな意見は、企業が持つ価値の多くは資産としてのブランドによって成り立っている事は疑いもないからだ。イーロン・マスクがTwitterを400億ドルで買収した際に受け取ったのはTwitterの契約ユーザ数29億人とTwitterと言うブランドの持つ価値だ。それ以外はほぼ無価値だ。
ブランド価値の評価は様々ある。その中の一つの、BRAND FINANCE GLOBAL 500 2023のランキングでは、Amazonがトップで2,993億ドル、Appleが2,975億ドル。このランキングでは、Twitterは2022年から対象ではないが、対象に入っているInstagramは474億ドル。InstagramとTwitterを比べると、確かにTwitterは、特に買収後に大きくブランド価値が毀損されたと考えられる。それでも、少なくとも、Instagramの半分弱の200億ドル程度の価値はあると考えられる。
ビジネスは基本的にブランドで成り立っている。だが、ソーシャルメディアサービスが、通常のビジネスと違うのは、ユーザが登録して利用しているために、新たに購買などの行動を必要としない。このため、仮にブランド名やロゴが変わったとしても、ユーザが新しいサービスを気に入られれば継続して利用していくことになる。だから既存ユーザに対しては、ブランドの変更はあまり大きな問題ではないと思われる。しかしながら、新規のXと言うブランドで新たにユーザにダウンロードさせるということであれば、Twitterのように、よく知られたブランドを持たない場合には難しい。新しいブランド名を認知させるためのマーケティングのコストは、莫大となる。
ブランド名変更にポジティブな面があるとすれば、イーロン・マスクの作る、新しいスーパーアプリだから変える意味がある。単にソーシャルメディアではなく、決済まで含むサービスを行うとすれば、ソーシャルメディアのイメージが強いTwitterを使い続けることの理由はなくなる。むしろTwitterの名前により決済などの新しいサービスが認知されないということも起こる。この場合は、むしろ変更したほうが良いということになる。
両面から考えて、最初のネガティブな意見については、新たなXブランドを認知させるためのマーケティングコストについては、すでに私がこれを書いている時点で、他の多くの人と同じように、Twitterが新たにXと言うブランドに変わると言うことを知っている。これだけ大きなニュースになることを考えると、追加のマーケティングストアほとんどかからないのかもしれない。しかも、イーロン・マスク自体がメディアであるので、彼が発信する情報は世界中にあっという間に広まってしまうため、現時点のTwitterのブランド価値がどの程度であろうとも関係ないと言うことになる。
結論としては、Twitterブランドが数百億ドルの価値があっても、それを捨てるということは間違いではないということになる。とは言うものの、前例のないことで発想力も度胸、もちろん財力もない私には無理な判断だ。