Disneyが、Huluを100%子会社化する。今日中に33%の株式を持つ少数株主のComcastから全株を86億1000万ドルで買収する。両社は2019年にプット・コール契約を締結しており、これが実行される。Comcastは、Huluからの撤退を決め、DisneyにHuluの保有株の購入(プット)を強制することができ、同時にDisneyはその時点でComcastに売却を要求する権利(コール)を取り決めていた。
Huluは4800万人の契約者と発表されている。既にComcastは以前より、自社の配信サービス、Peacockのコンテンツ拡充のために、Huluへの自社の人気番組の「サタデーナイトライブ」や「ザ・ボイス」などの供給を停止していた。Huluには、少数の自社制作番組の他に資産はないために、契約者数とブランドだけが資産となる。4800万人とブランド名に対して86億円が適切な値段かどうか判断できない。両社が納得している数字だからいいのだろうけれど。
HuluはABC、 FX、 FXなどのDisney系列のネットワークの番組に加え、「Only Murders in the Building」や「The Kardashians」などのオリジナル番組も制作し配信している。Comcast関係のコンテンツはなくなっているので今回の買収によりコンテンツのラインアップが大きく変わることはないようだ。
Huluは2007年に設立され、2008年にサービスを開始した。この段階では、現時点ではComcast傘下の会社のNBCユニバーサルやFox、Disney、Time Warnerなどが共同所有する配信企業であった。当時はインターネット企業に対抗するために伝統的なコンテンツ制作企業が共同で対抗しようとしたと言うことであろう。その後Disneyが21世紀フォックスのコンテンツ資産を買収した際に、Huluの株式も所有することとなり、Disneyが、Huluの支配権を確立している。
創業後に、Huluは海外事業を検討しその第一弾として日本に2011年に進出した。しかし日本では事業は成功せず、コンテンツ調達も難航したために、日本法人とその事業を2014年に日本テレビに売却した。その後は、日本テレビと米国Huluは、ブランドをライセンスするだけの関係であった。日本テレビは、独自にコンテンツを制作・調達して、日本のHuluの事業を育ててきた。その後、2017年に日本テレビは経営基盤強化のために米Hulu、 Yahoo!、東宝、読売テレビ、中京テレビを引き受け先とする第三者割当増資を発表し、この段階で米Huluとの資本関係は復活している。
日本のHuluの契約者数は正式な発表はないが、2021年では280万人とされている。日本では、Amazon Prime Video、 Netflix、DTVについで、第4位の動画配信サービスである。一部は、古めの海外ドラマや映画があるものの、日本テレビ色の強いラインアップになっている。
米Huluは海外事業を持たないので、Disneyは、すでにHuluのコンテンツを海外ではDisney+で配信することを発表している。日本のHuluは、独立した別会社で米Huluは少数株主であるために、アメリカのHuluのコンテンツをの権利を持つわけではない。今回のDisneyの完全子会社化で、日本のHuluには直接影響はないが、アメリカのHuluで配信されている番組が、日本ではDisney+が配信しているということが増えてゆくと思われる。
今回の買収でDisneyは4800万人の契約者を持つHuluを100%を所有にすることになり。2022年12月段階でのDisney+の契約者1億6000万人と加えると2億人を達成する。これはNetflixの2億3000万人に肉薄する数字となり、今後動画配信サービスの争いも激しくなることが予想される。