VUCAの年が続く

by Shogo

歳をとると年々季節感がなくなって、正月が来たからといって、特にめでたいと思わなくなった。子供の頃にお年玉がもらえるということや、父母・祖父母などが、昔からの習慣の様々な行事を行ったから、特別な意味があるように感じていたのだろう。

毎日起こるように1日が終わって次の1日が始まる。ただそれだけのことだ。古代の狩猟社会では、季節が変わることにより、多少獲物に変化はあっただろう。それが農耕社会になることで、1年のサイクルが重要な意味を持った。そこから生まれたカレンダーが、新しい年を祝うことにつながった。新しいカレンダーの始まりが、次のサイクルで多くの収穫を願うための宗教的な意味を持ったり、心理的な意味を持つようになったものと思われる。

しかし、今やそのような意味は全て失われ、単に2023年と言う記号が2024年に変わるだけだ。2023にも2024にも特別な意味は何もない。

2024と言う数字で連想されることと言えば、1984からの40年後ということだ。Appleは1984年1月にMacintoshを発売した。その発売を告知するCM「1984」はスーパーボールで放送され、20世紀を代表する広告として今でも有名だ。金髪の女性がハンマーを投げて、ディストピアの全体主義国家を倒す瞬間を描いている。そのCM監督はリドリー・スコットで、当時はすでに映画の「エイリアン」や「ブレードランナー」で有名だった。映画監督の前はCM監督として多くの作品を残している。CM監督としてはMacintoshの発売広告は代表作だろう。

そのMacintoshの発売広告よりも印象に残っているのが、アメリカに行った頃に見た日産の広告で、多分日本名でフェアレディーの広告だ。影のような車がヘッドライトを光らせて、夜の高速道路でポルシェを追い越していく。黒い画面の中でスピードを上げる車の影だけが見える広告だ。作ったスコットもすごいが、許した日産もすごいと思った。それは、1984年から5年経った頃だ。

新しい年の2024年も世界でいくつも戦争が続いている。不透明な世界情勢は変わらない。冷戦終結後の晴れやかな気分はどこへ消え、環境問題も含めて人類の未来に落ちる暗い影は消えそうにもない。

特に今年は台湾の総統選挙の結果が東アジアの状況に大きな影響を与える可能性がある。そして11月のアメリカ大統領選挙も同様に世界の安定に何らかの影響与える可能性もある。日本の自民党の総裁選挙もあるが、こちらは国内外を問わず、大して影響は無いのであろう

2024年もアメリカ軍が使い始めたと言うVUCAという言葉に象徴される状況が引き続き続くようだ。VUCAは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、社会やビジネスにおいて未来の予測が難しくなる状況を意味する。アメリカで軍事用語として考案され、2010年代になってビジネスの業界でも使われるようになった。社会やビジネスにおいて環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が難しい状態であることを示す言葉だ。2024年もVUCAが当てはまる年が続く。

2024年に特別の意味はないが、人間は厄介な生き物で年々歳々と感情や損得が澱のようにように溜まってゆく。自然界においては常にエントロピーが増大する。これが2024年をさらに厄介な状況にする。ハンマーを持った女性がこの閉塞状況を打ちこわしてくれるはずもない。年の初めから、なんとも暗い気持ちになる。これが歳をとるということなのだろうか。

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