米国司法省がAppleを独禁法で提訴

by Shogo

米国司法省は、AppleがiPhone市場において独占的地位を乱用し、競争を阻害しているとして、独占禁止法違反でAppleを提訴した。アメリカの独占禁止法違反の提訴には慣れているが、Appleが独占的な企業だと思っていなかったので、正直言って驚いた。

司法省の主張は、Appleが「高機能スマートフォン」と「アメリカでのスマートフォン」の2つの市場において独占力を持っていると主張している。Appleは高機能スマートフォン市場において約70%以上のシェアを持っていると推定されている。Androidは低価格帯の商品が多いからだろう。また、米国におけるスマートフォン市場では、Appleは約65%以上のシェアを持っていると推定されている。

この市場シェアに加えて、司法省は、Appleが以下の独占的な慣行を行っていることで、競争を阻害していると主張している。

App Store  

アプリ開発者がAppleのApp Storeを通じてアプリを配布する際に、30%の手数料を徴収。競合するアプリの機能を制限したり、App Storeでの掲載を拒否したりする。アプリ内課金システムを独占し、開発者から不当な利益を得ている。

Appleのエコシステム

iPhoneの独占の周りに「堀を構築し、強化した」と訴状に書かれている。Bluetoothで繋がるデバイスや支払いシステム、サービスでユーザーを囲い込んで、「ユーザー、開発者、その他の第三者を犠牲にして」、Appleの独占を維持し、定着させているとの主張だ。

iMessage

Androidユーザーとのメッセージ送信時に緑色の吹き出しを表示し、ユーザーをiMessageの利用に誘導。AndroidユーザーにiMessageを利用させるために、RCS(Rich Communication Services)と呼ばれる新しいメッセージング規格の採用を拒否している。iMessageをAndroid端末にも開放することで、競争を促進し、消費者の利益を守ることができると司法省は主張している。

これらの慣行は、競合他社の参入を阻害し、消費者の選択肢を制限し、Appleの利益を不当に増加させていると司法省は主張している。

Appleは、司法省の訴訟を「根拠のないもの」と主張し、反論している。まず、市場シェアだ。Appleの、世界のスマートフォン市場におけるシェアは約20%であり、独占とは言い難いとしている。確かに、スマートフォン市場は競争が厳しく、シェア争いは激しい。Appleも楽々と販売ウィ続けている訳でなく、製品やサービスの開発は言うまでもなく、広告やプロモーションにかなりの費用をかけている。

App Storeについては、Appleは、 App Storeは、開発者にとって重要な収益源であり、消費者に安全で高品質なアプリを提供する役割を果たしていると主張している。30%の手数料は業界標準であり、競合他社も同様の手数料を徴収していると主張している。30%の手数料は別にして、「野良アプリ」が蔓延しないクローズドの App Storeはユーザーの立場からは安心感があるので、これはヨーロッパのように解放しないでもらいたい。

iMessageについても、iMessageは、ユーザーにとって使いやすいアプリであり、競争を阻害するものではないとAppleは主張しているが、これは解放した方が良いかなと個人的には思う。Appleはメッセージ送信のRCSについては、RCSはセキュリティ上の問題があり、Appleはユーザーの安全を守るために採用を拒否していると言っているが、これは素人なので判断できない。

iPhoneの成功は、17年も前の革新性、ブランド力、デザイン、優れたユーザー体験などが要因として挙げられる。しかし、今では、SamsungやHuaweiなどの競合他社が追い上げており、Appleの独占的地位は揺らぎつつあると思われる。つまり、どのスマートフォンのiPhoneも含めて似たり寄ったりだ。だから、Appleに強い独占力があるとも思えない。

このような環境で、司法省がAppleを独占禁止法違反で立証するためには、以下の2点を証明する必要がある。

  • Appleが市場における独占力を持っていること
  • Appleが独占力を乱用して競争を阻害していること

Appleは、これらの点を争うとみられる。今後の裁判で、Appleが独占禁止法違反に問われるかどうかは、市場シェアの定義、競争の程度、消費者への影響などの点が争点になる。素人考えでは、シェアや競争状況を考えても、Appleが独占力を持っているとは言い難いのでは無いだろうか。

独占禁止法違反の訴訟の事例としては、1990年代のMicrosoftのWindows OSがある。この時はWindows OSが95%の市場シェアを持っていたことから、独占力があると考えられた。だが最終的には和解で終わっている。

このようなことを考えると、司法省の主張にあるAppleの分割はないにせよ、Appleが何らかの譲歩をする可能性はある。その際に考えられるのは、AppleはApp Storeの手数料を下げることを余儀なくされる可能性だ。そして、ヨーロッパのように、App Store外でのサードパーティ製アプリの制限の緩和だ。また、iMessageをAndroidユーザーにも開放することを余儀なくされる可能性もある。これらの変化は、Appleのマーケティング戦略であるブランドスイッチの障壁を低し、iPhoneのエコシステムを阻害し、Appleの売上や収益に影響を与えるかもしれない。

いずれにせよ、このような訴訟は長期化が予想され、まだまだ結果はわからない。

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