Spotifyが、eラーニングに進出

by Shogo

Spotifyが、新しいコンテンツとしてeラーニングを開始した。これが、現在の音楽ストリーミング、ポッドキャスト、オーディオブック事業に加わる。

eラーニングは、まずイギリスで無料と有料のビデオで開始されている。BBCやSkillshareなどと提携し、少なくとも2つのレッスンが無料で提供され、コース全体の価格は平均で£20から£80の範囲だ。この価格はベーシック・ユーザーでもプレミアム・ユーザーでも同じとなっている。プレミアム・ユーザーには割引があってもよさそうなものだが、音楽ストリーミングとはターゲットが少し違うと判断していると言うことなのだろうか。つまり、新規ユーザーを取り込む戦略なのかもしれない。

Spotifyのeラーニングは、競合となるYouTube、Master Class、LinkedIn Learningのeラーニングと同様で、音楽制作からExcelの使い方、オンライン教育レッスンの作成方法まで、幅広いトピックが含まれている。

eラーニングも各社が参入して競合状況は激しい。すでに市場規模が2023年に3150億ドル以上と推定されている。中には、インタラクティブコンテンツも多く存在するが、Spotifyの教育への取り組みは、インタラクティブではない、オンデマンドビデオだ。

Spotifyがeラーニングを開始した理由は、主にビジネスの多様化と、収益性を目指す戦略の一環であろう。eラーニングや専門家教育といった新しい分野に進出するのは、Spotifyにとっては自然な展開である。Spotifyの成長は続いているが、音楽配信事業については成長は鈍化しており、最近も何度かのレイオフを行っている。そこで、成長の維持のためにも、新たな収益源を求めている。

Spotifyは、人気のあるポッドキャストとeラーニングとの間に密接な関係があると考えているようだ。Spotifyによれば、約半数のSpotifyプレミアムユーザーが教育または自己啓発テーマのポッドキャストを聞いているという。Spotifyは、推薦システムを利用して、教育または自己啓発テーマのポッドキャストを聞いている人に、eラーニングのコースもクロスプロモーションすることができる。

音楽配信のイメージが強いSpotifyは、過去10年近くにわたり、ビデオコンテンツへの取り組み行ってきた。もちろん、YouTubeやNetflixの域には達していないが、音楽ビデオを一部市場で導入し、ビデオへの本格的な取り組みを開始している。だから、ビデオコンテンツについても問題なく事業を開始する能力はある。これも、eラーニング進出の理由の一つだ。

このようなSpotifyのeラーニングの取り組みは、Netflixがこれまで否定してきた広告の導入やライブスポーツ中継への参入というような路線の変更・拡大とも軌を一にする。これは、どの企業も、多角化して、成長の可能性を新天地に求めることだろう。

IFPI (International Federation of the Phonographic Industry)の最新のグローバル・ミュージック・レポートによると、2023年の世界の音楽産業の収益は、ストリーミングサブスクリプションの成長により10パーセント増加した。これは9年連続の成長を示している。2023年、ストリーミングは世界の音楽産業の収益の67パーセントを占め、Spotifyなどの有料ストリーミングサブスクリプションのユーザー数は引き続き増加している。

ただし、成長率は前年と比べて鈍化している。それでも、有料ストリーミングサービスは2023年に7800万人の新規ユーザーを獲得し、ユーザー数は合計で6億6700万人に達した。とはいうものの、有料ストリーミングサブスクリプションのユーザーの成長率が鈍化していることや、このような有料サービスの限界普及率を考慮すると、今後の成長の可能性をeラーニングに求めようということだろう。

とは言うものの、eラーニングでも多くの競合が存在することも事実だ。しかも無料のYouTubeのコンテンツも数多く存在する。その中で、英国でのSpotifyのeラーニングの取り組みが成功して、多くの国で展開するのか、どうなるのか。

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