AIについて話を聞かない日はない。もはや、AIはあらゆるところで使われており、AIを使ったサービスや商品、販売方法は珍しくない。今朝読んだ記事にコカ・コーラの事例が紹介されていた。
コカ・コーラは、AIを製造からサプライチェーン、自動販売機、消費者モデリングまで、ビジネス全体で活用しているという。特にマーケティング分野では、AIの能力が消費者に最も分かりやすく示されており、Cokeのクリエイティブ表現を支えていている。
Y3000 Future Flavor Project
コカ・コーラは、AIを活用して3000年の未来のコカ・コーラの味を予測する「Y3000」プロジェクトを実施した。消費者の嗜好データを分析し、未来の味覚トレンドを反映した新製品を開発した。パッケージにはAIが生成したアートワークが使用され、オンラインではAIフィルターを通して977年後の自分の姿を見ることができるイベントも行われた。Y3000は、最近開場して話題になった球形の、ラスベガスのスフィアで開催された展示会でも紹介されたそうだ。これは、AIを使ったお遊びとしては面白いが、特にすごくもない。普通のAIを使った虚仮威しということか。
Create Real Magic Campaign
だが、2023年3月に「Create Real Magic」というAIプラットフォームを立ち上げている。このプラットフォームは、OpenAIのChatGPT-4とDALL-Eを組み合わせた初の試みであり、世界中のクリエイターに対してコカ・コーラのブランド資産を提供し、AIを活用して新しい作品を生み出すことを促進した。これは、本格的なAIの使い方だろう。
キャンペーンの目的は、AIの力を借りて消費者とブランドの距離を縮め、創造性を刺激することだったそうだ。コカ・コーラは、ブランド資産を、AIを使ったイメージ生成で遊んでもらい、若い世代とのつながりを深めようとしたようだ。
キャンペーン開始から数ヶ月で、世界中のクリエイターが12万点以上のオリジナル作品を生成したという。コカ・コーラのロゴやパッケージ、キャラクターなどをモチーフにした多様なアート作品が、AIによって次々と生み出された。これは、生成AIの話題に乗り、かつ実際に多くの若者に使わせることで、これまでにないコカ・コーラのブランドイメージ発見に貢献しただろう。ちょうど1年前は、まさに生成AIが大きな話題になっていた時期だから効果も大きかったはずだ。
この成功を受けて、コカ・コーラは2023年末のホリデーシーズンに、「Create Real Magic」をさらに進化させた消費者参加型のキャンペーンを展開した。40以上の国と地域で、一般消費者がAIを使ってオリジナルのホリデーカードを作成できるようにした。これは、見かけて興味を持ったが使うことはなかったのだが、興味深い試みだった。
消費者は、サンタクロースやコカ・コーラのトラック、北極グマなど、コカ・コーラが長年のホリデーキャンペーンで培ってきた歴史的なブランド資産をベースに、AIで再構成することができた。テーマやシーンを選択し、プロンプトを入力すると、世界に一つだけのデジタルカードが自動生成された。これは、AIについて好奇心があるが使いこなせていない多くの人を惹きつけるのに成功したようだ。
完成したカードは、SNSで友人や家族とシェアすることができた。また、一部の優れた作品は、ニューヨークのタイムズスクエアやロンドンのピカデリーサーカスなど、世界のランドマークに設置されたデジタルビルボードに掲出された。これも、参加者の関心を惹くとともに、キャンペーンの広がりに貢献した。
「Create Real Magic」キャンペーンは、テクノロジーとクリエイティビティを融合させることで、ブランドと消費者の新しい関係性を築く画期的な試みだったと言えよう。コカ・コーラは、AIの力を活用することで、コカ・コーラが導くAI体験をより多くの人に届けることに成功した。新しいことに挑戦しているというイメージは何より必要だ。
「Create Real Magic」以外にも、ユニークなフォントとサウンドを作成した「Best Coke Ever」キャンペーンも面白い。、コークZero Sugarの泡をAIで学習させ、カスタムフォント「Coke Sans Sugar」を作成した。このフォントは、広告看板など、あらゆる言語で単語を作成するために使用できる。さらに、Coke Soundzというボトル型の楽器も開発され、AIがコーラの音からAIが生成したトーンを再生することができるという。これも、お遊びといえばお遊びだが、それも広告の本質である。
コカ・コーラは、マーケティング戦略を大きく転換して、従来のマスメディア向けのリーチ施策から、消費者一人ひとりが深くコカ・コーラの世界観を体験できる施策へと重点を移しているようだ。これは、若年層のデジタルネーティブ化に対応するためであり、体験型の訴求が重要だ考えている証だろう。