米連邦取引委員会(FTC)は、Adobe Systemsを相手取り、人気ソフトウェアのサブスクリプションプランにおいて高額な解約手数料を隠蔽し、解約を困難にしているとして提訴した。
FTCによると、Adobeは「年間支払い月額プラン」の契約条件の重要な部分を小さな文字や、オプションのテキストボックス、ハイパーリンクの裏側に隠しているという。特に問題視されているのが、1年目に解約した場合に残りの支払い額の50%を請求する早期解約手数料だ。これにより、数百ドルにも上る解約料が発生するケースもあるとFTCは指摘している。
さらにFTCは、オンラインで解約手続きをしようとする利用者に対し、Adobeが不必要に複雑な手順を強いていると主張。電話で解約を申し出た場合も、突然通話が切断されたり、複数の担当者への説明を求められるなど、解約を阻むような対応が行われていると訴えている。Adobeのサブスクを長く続けているが、まだ解約していないので、どれほど難しいのか認識していない。
だが、これは、日本でもよく使われている解約の防止あるいは引き延ばしの手法で、姑息だが一般的なものだ。多くの事業者が同様の手口を使う。これに、メスを入れるFTCは日本の消費者庁などと違いエライ。
最近は、ソフトウエアはパッケージの買い取りでなく、サブスクリプション型が多いが、Adobeはサブスクリプション型に移行した初期の一社だ。2012年にサブスクリプションのAdobe Creative Cloudを開始して、SaaS型サービスが同社の主力事業となっている。2023年3月期のサブスクリプション収入は49億2000万ドルで、全体の95%を占めた。2024年第1四半期も成長が続き、デジタルエクスペリエンス部門のサブスクリプション収益は11億6,000万ドルで前年比12%増加している。
Adobeがサブスクリプション型で成功した要因
Adobeがサブスクリプション型で成功した要因はいくつか考えられる。サブスクリプション型のモデルにより、ユーザーは高額な買い切り費用を支払うことなく、月額料金で最新のソフトウェアを利用できるようになった。その結果、ユーザー数が大幅に増加した。また、サブスクリプション型により、アドビは新機能をすぐにユーザーに提供できるようになったことも大きい。以前は1年半ごとのメジャーアップデートだったが、クラウド経由で毎月のように機能追加できるようになり、ユーザーの満足度が向上している。
そして、ユーザー層の拡大だ。Adobeのソフトは高く、以前は数十万円の単位だったが、サブスクにより月額払いという低価格化により、プロだけでなく趣味でクリエイティブツールを使う層にもAdobe製品が浸透した。このユーザー数の増加が売上拡大につながっている。一度に高い金額を払うのは勇気がいるが、同じ金額だが毎月分割で払うことは、心理的障壁が低くなる。
そして、今回のニュースとは直接関係ないが、Adobeが売り上げを伸ばしているのは、マーケティング領域への事業の拡大だ。AdobeはCreative Cloudに加え、マーケティング分野のExperience Cloudなどの事業者向けのサブスクリプションサービスを拡大してデジタルマーケティングプラットフォームとしての成長も売上に貢献している。
今回のFTCの提訴で思うのは、同様の手法を使う日本の事業者にもよい影響を与えてくれないかということだ。さらに、解約逃れほど悪質ではないが、楽天の注文の際のデフォルトでメルマガが申し込みになってしまうのも、いつも頭に来るので、これも何とかして欲しいものだ。