NVIDIAが、2024年5〜7月期の四半期決算で、利益が2倍以上になったと報告した。売上高が前年同期比122%増の300億4000万ドル(約4兆3400億円)と過去最高だ。
NVIDIAは、AIブームを背景に驚異的な成長を遂げている。特にデータセンター事業の売上高は、同じ期間で、前年同期比154%増の263億ドル(約3兆8000億円)に達し、同社の成長を牽引している。
NVIDIAの需要拡大の背景には、AI技術の進展によるデータセンター向けGPUの需要増加がある。クラウドコンピューティングやAI関連プロジェクトの増加により、同社のAI関連製品・サービスが高い評価を受けている
世界各国は、成長分野であるAIへの投資を拡大している。独自のAIモデルを構築を進めているために、Nvidiaのチップに対する需要が高まっている。この理由は、各国が、独自の文化的、政治的、安全保障上のニーズを満たすために、AI開発を優先しているからだ。ここには、米中対立も加わっているから、AI開発は熱を帯びている。
NVIDIAは2024年3月に、次世代AI向け半導体「Blackwell B200」を発表している。従来製品と比べ、AI向けの作業で3〜5倍の処理能力を持ち、タスクによっては最大30倍の高速処理を実現するとのことだ。Amazon、Google、Microsoft、OpenAIなど主要クラウドサービスプロバイダーがすでにこの新チップの導入を見込んでおり、ますますNVIDIAの需要拡大が期待される。
ただし、今週の決算発表では「Blackwell」の生産上の問題に言及があり、株価は一時下落した。しかしNVIDIAは、製造工程の変更により歩留まりを改善し、第4四半期に数十億ドルの売上高をもたらす見込みだとしている。NVIDIAに投資をしているわけではないので、下落は関係ないが、この発表で下落からは回復するのだろう。
NVIDIAの将来性には不安もある。NVIDIAの主要顧客であるAmazonやMicrosoft、Googleなどは、コスト削減のために独自のAIチップ開発を進めているという。Appleの独自半導体開発を見ても、これは現実味がある。これに対しNVIDIAは、クラウドコンピューティング企業など向けにカスタムAIチップの設計を行う新事業部門を立ち上げ、顧客との取引を継続する戦略を取っているが、これが奏功するかどうかだ。
また、AMDやIntel、Cerebrasなどの競合他社もAI向けチップの開発を加速させており、NVIDIAの市場シェアに食い込もうとしている。しかしNVIDIAは現在、AIチップ市場で90%以上のシェアを握っており、当面は優位性を維持すると見られている。OpenAIなどAI企業は、NVIDIAのチップに合わせた開発を行っているので、AMDやIntel、Cerebrasなどが、すぐにNVIDIAに取って代わるのは難しいだろう。チップを変えることは、システムやコードの書き直しも必要になるかもしれないからだ。
AIの活用が加速する中、データセンターの需要はさらに高まることが予想される。NVIDIAは2025年度第3四半期(2024年8〜10月)の売上高を325億ドル(約4兆7000億円)と予想しており、当面は高い成長が続くとみられる。
ただし、すでにAI企業の過剰投資リスクへの警戒感も高まっており、NVIDIAを取り巻く環境は不透明さもあることも事実だ。どちらにせよ、NVIDIAのAI分野における圧倒的な存在感は当面揺るがないものの、業界の変化のスピードは速く、未来はわからない。しかし、NVIDIAに投資をするわけではないから関係ない。単に、生成AIという良いツールが使えれば良いだけだ。どこのチップで動いていてもユーザーからは関係ない。