就職活動のシーズンである。
一般的には、名の通った大企業志向は根強いようだ。「大手に行きたい」というストレートな発言も出てくる。だが、今の時代、大企業に入れば安泰なんて保証は、どこにもない。終身雇用制度も崩壊しつつあるし、むしろ変化の激しい時代だからこそ、中小企業の方が面白い経験ができるんではないか、と思ったりもする。
もちろん、大企業で働くことの魅力はたくさんあるのだろう。安定した収入、充実した福利厚生、社会的なステータスなどいっぱいあるのかもしれない。異性にもモテるかもしれない。
でも、学生には、それは本当に求めているものなのか考えるようにアドバイスする。それでも、大企業を希望する学生に聞いてみると、「安定したいから」という答えが返ってきた。
安定志向が悪いとは言わない。でも、若いうちから安定を求めてしまうのは、ちょっともったいない気がする。20代なんて、失敗してもやり直せるチャンスがたくさんある時期だと諭す。色々なことに挑戦して、自分の可能性を広げてほしい。そう思ってしまう。安定よりやりたい仕事かどうかが大切なのだ。それが、いつかきっと分かるからと説明する。
では、自分はどうだったかと考えると財閥系の上場企業ではない、虚業と言われた広告会社に入った。上場企業を受けても採用されなかったかも知れない。しかし、就職した会社は、それなりの規模の会社だったから安定も求めたとも言える。だが、当時と今は違っている。今は上場大企業どころか産業が消えてしまう時代になっている。そこでの安定は霞のようなものだ。
にも拘らず、今の学生たちは、安定志向が強いように感じられる。老人よりも現実を見ているのか、先の見えない不安な時代だからか。
だから、就活サイトの人気企業ランキングを見ても、上位に並ぶのはメガバンクや大手メーカーばかりだ。もちろん、安定した企業で働くことは悪いことではない。でも、若い頃から「安定」だけを求めてしまうのは、ちょっともったいない気がする。
「安定」もいいけど、「夢」も大切。語学力やスキルを磨けば可能性は広がる。若い人たちには、もっと自分の可能性を信じて、チャレンジしてほしい。学生には何度もそう言っている。安定より「好きなこと」は何かだ。この歳になると余計にそう思う。
多くの学生は、好きなことが分からないと答えることも多い。それは、たぶん事実だろう。自分も学生の頃には、ぼんやりとしか好きなことが思い浮かばなかった。
昔と違って今は、ネットには仕事や会社に関する情報がたくさんある。ネットなどに溢れている情報の中から、本当に必要な情報を選び取る力が必要なのだろう。
そのためには、まず自分自身についてよく知ることが大切だとアドバイスする。自分がどんな仕事に興味があるのか、どんな働き方をしたいのか、どんな価値観を大切にしているのか。自分の軸がしっかりしていれば、情報に惑わされることはない。だが、これを考えてくれない学生もいる。だから、3年後に朝起きて何をしているか想像しろと言っている。
好きなことが分かって、自分の価値観や働き方を見てもらいたい。そこから、、企業の規模や名前に惑わされることなく、自分のスキルや価値を高められる職場を選んでほしいと思う。その際に、アドバイスするのは、選択肢があってやりたい仕事ができるなら、できるだけ中小企業を選ぶということだ。それは、そこには成長のチャンスがあるからだ。
大企業だと、組織の歯車の一つになりがちで、自分の仕事が会社全体にどう影響してるのか、実感しにくい。縦割りで横が見えず、階層も多く自分が何をしているのかも分かりにくい。
でも、中小企業なら、会社全体を見渡せるし、自分の仕事がダイレクトに会社に貢献してると実感できる。それに、若いうちから責任ある仕事を任されることも多いから、成長スピードも速い。例えば、新規事業の立ち上げに携わったり、海外進出プロジェクトに参加したりと、大企業では、なかなかできない経験を積めるチャンスがあるかも知れない。
もちろん、中小企業ならではの大変さもあるだろう。リソースが限られてるから、自分で考えて行動する力が必要だし、変化の波にも柔軟に対応していかなくてはならない。でも、それが、これからの時代を生き抜くために必要な力だ。
だから、学生には、ぜひ中小企業やベンチャーに目を向けてほしいと思っている。