ChatGPTが登場して爆発的に普及を始めた際にはGoogle検索に大きな影響が出ると予想していた。実際にGoogle社内でも緊急事態宣言が出されたと聞いている。
しかし、AIチャットボットの急速な普及にもかかわらず、Google検索は、その地位を維持しているようだ。Bank of America(BofA)グローバルリサーチの最新報告によると、Google検索のグローバルな日次訪問数は「安定」しており、AIチャットボットの影響を大きく受けていないことが明らかになったという。この報告は、Webトラフィック解析を行うStatcounterのデータを基にした分析を含んでいる。
2025年1月のGoogle検索のグローバル平均日次訪問数は、前月比1%増の27億件で、前年同期比ではわずか1%減少だそうだ。このデータにはデスクトップおよびモバイル検索が含まれており、Google検索が依然として多くのユーザーに利用されていることを示している。また、ChatGPTが一番普及していると思われるアメリカ国内においても日次訪問数は前月比2%増加し、前年同期比では横ばいとなっている。
一方で、AIチャットボットの利用は急速に拡大している。例えば、ChatGPTは2025年1月にグローバルで月間利用者数が4%増加し、前年同期比では148%増加した。同様に、アメリカ国内ではChatGPTの利用者数が前月比4%増加し、前年同期比では96%増加している。また、PerplexityやClaudeといった他のAIチャットボットも人気を集めており、それぞれ前年同期比で429%、331%という大幅な成長を遂げている。
しかしながら、これらのAIチャットボットがGoogle検索トラフィックに与える影響は限定的のようだ。BofAアナリストは、「ChatGPTや他のAIエンジンがGoogle検索トラフィックやシェアに重大な影響を与えているとは言えない」と指摘している。むしろ、これらのAIチャットボットは新たなAI利用の情報行動を生み出しているようだ。
GoogleはAIチャットボットとの競争に対応するため、「AIオーバービュー」という新機能を導入した。この機能はユーザーのクエリに基づいて要約を生成するものだが、BofAによると、この機能がGoogle検索トラフィックを押し上げる効果は見られていないそうだ。これは、ユーザーが依然として従来型の検索方式を好む傾向があることを示唆している可能性がある。人間は、古い習慣は捨てられないということのようだ。
2025年1月時点で、Google検索のグローバル市場シェアは89.8%であり、前月比0.05%増加したが、前年同期比では1.69%減少した。一方で、Bingは市場シェアが前月比0.04%減少したものの、前年同期比では0.5%増加している。このような状況からも分かるように、Googleは依然として圧倒的なシェアを保持しているが、Bingのような競合他社も成長しているようだ。
BofAアナリストによれば、2025年には以下のような、Google検索にとってのリスクが予想されている。
- AI競争から生じるトラフィック圧力
- OpenAIによる広告展開がGoogle検索予算に与える影響
- 米国およびEU裁判所の裁判が市場感情に与える影響
特に注目すべきなのは、2022年8月に米国司法省が提起した反トラスト訴訟だ。この訴訟ではGoogleが検索および広告市場で独占的地位を持つとされており、その結果としてChromeブラウザなど一部事業の分割が求められる可能性がある。同様の訴訟はヨーロッパでも進行中であり、このような法的課題がGoogleの将来にどのような影響を与えるか現時点では分からない。
AIチャットボットという新たな競争相手が台頭する中でも、Google検索は、現時点では、その安定性を維持している。つまり、その広告ビジネスも現時点では揺るがないということのようだ。しかしながら、市場シェアや法的課題など、多くの側面で変化が予想されるため、この分野で競争力を維持するためにはさらなる進化が求められるだろう。ただし、問題は、どのような進化が必要か誰も分からない。