AT&Tが. 3年前に買収したTimeWarnerを、Discoveryと合併させる交渉していると言うことだ。もし実現すれば売り上げが、5兆円を超え、営業収入が1兆円の巨大メディア企業が誕生する。
現在は、AT&Tのメディア部門となっているTimeWarnerは、映画のWarner Bros.や有料チャンネルのHBOを傘下に持ち、ケーブルチャンネルのCNN、 TNT、 TBSなどのニュースやスポーツに強いケーブル放送局を所有している。
Discoveryも、フラッグシップのDiscovery Channel以外にオプラ・ウィンフリーのOWN、HGTV、Food Network、Animal Planet等のケーブル局を運営している。これが合体すればNetflix やNBCUniversalを追い越して、Walt Disney Companyに次ぐ第2位の巨大なコンテンツ・メディア企業となる。
AT&Tは、そのインフラビジネスにコンテンツビジネスを加えるとシナジーが生まれて考えて、3年前に法規制や政府の反対などの障害を乗り越えてTimeWarnerの買収したが、思ったようには進まなかったと言う事だろう。
特に、今までのメディアビジネスとは違い、ストリーミングが主戦場となっている。その定額配信ビデオサービスは激しい競争状態にあり、Netflixが先行し、それをDisney+が追いかけている。TimeWarnerも、HBO MAXで参入しているが、他にも、多くの競争相手が新規参入している。TimeWarnerのHBO MAXの契約者の2,000万人にDiscoveryのアプリの契約者数の1,500万人を加えても3,500万人で、Netflixの有料会員2億人にははるかに及ばない。
しかも争いは、同じ定額ビデオ配信サービスだけではなく、ターゲットとなるユーザはInstagramやTikTokなどソーシャルメディアのサービスに時間をとられてしまっていて、彼らを振り向かせるためには、強力なコンテンツを必要とする。
この競争に勝つための、コンテンツへの投資額は莫大なものになることが確実だ。AT&TがTimeWarnerを買収して以降の3年で学んだ事は、多分コンテンツビジネスを経営していくのは難しいと言うことなのだろう。だからDiscoveryと合併させ、新会社のどの程度の割合をAT&Tが所有するか現時点ではわからないが、経営はコンテンツビジネスの専門家に任せようと言うことになったのではないだろうか。合理的な判断に見えるが、それでは8兆円を投資して、TimeWarnerを買収する際に何の戦略もなかったのだろうか。
過去にもインフラとコンテンツのシナジーを目指して多くの企てがあったが、うまくいったものは少ない。一見合理的に見えるが、扱う対象が全く違っている。コンテンツビジネスの場合には、製作者や出演者などの人間であり、何が受けるかと言う計算できない部分を管理していかなければいけない。一方、インフラビジネスは、より合理的かつ予測可能な計算が当てはまるケースが多いだろう。
新たに誕生するTimeWarner/ Discoveryは、巨大なメディアビジネスを企業となるが、既存の放送ビジネスが大きな変化をしようとしている中で、その巨大さは脆い。放送から、ストリーミングに変化するコンテンツ・エンターテイメントビジネスで、どのような生き残りのための戦略を打ち出すなのだろうか。