オリンピック種目と言うと、長い歴史を持つ伝統的な競技だと言うイメージがある。それがTBSの番組のSASUKE/Ninja Warriorがオリンピック種目の候補になると言うと違和感がある。しかし考えてみると、どんなスポーツも、レスリングなどの例外を除いて長くても100年を超えるほどの歴史しかない。夏と冬のオリンピック競技のボード系のスポーツは、せいぜい20年から 30年だ。そう考えると1997年からテレビ放送されたSASUKEは、ずいぶん長い歴史があるとも言える。人間は、それより、私は、何か前提条件を与えられると、いちど思い込んだ固定観念から逃れられないものだ。
SASUKEが、オリンピック種目の候補になっているのは近代五種競技での1つとしてだ。近代五種は、水泳・フェンシング・射撃+ランニング・馬術の5種目で争われてきた。近代五種を統括する国際近代五種連合は、2024年のパリ五倫の後から、馬術を外し、障害物レースを入れることを、試験導入することを決定している。
今週の月曜日と火曜日、トルコのアンカラでテストイベントが開かれる。ここでTBSが、ヨーロッパで撮影に使っているSASUKEの障害物競走のセットが使用される。まだ、TBSのSASUKEに決定したわけではなく、もう一つのフォーマットもテストされる予定になっているようだ。
国際近代五種連合は、馬術に代わる新しい障害物種目として、候補になるスポーツを募集して、50以上の提案を受けて、2つの候補に絞り込んだ。そのうちの1つがSASUKEだ。
今回のテストイベントは、TBSも参加してワールド障害、国際障害スポーツ連盟、と国際近代五種連合で共同で運営される。このワールド障害と国際障害スポーツ連盟の違いがよくわからないが、SASUKEのような障害を乗り越えていくスポーツの団体が2つあるようだ
一方で馬術を外すことには、反対するグループもあり、従来の五種競技を支援する競技者は強い反対の意思表示をしている。これが、どのように結論に影響するのかはよく分からない・
この馬術の問題は、東京オリンピックの際にドイツのコーチが馬を殴った事件も関係していると思われるが、それ以上にテレビ映りの良い種目が求められているということが大きいのだと思われる。馬を持ち込むと言うような面倒な仕事が含まないような競技が求められているのも事実だが、それよりもテレビでの見栄えだ。国際近代五種連合にしてもIOCにしてもテレビ映りが良くて、視聴率が稼げるスポーツを求めている。
そう考えていくと、テレビ番組で人気のあるスポーツを、あるいは、番組そのものをスポーツにすると言うことの方が自然の流れだ。SASUKEはTBSが制作し放送している番組で、現在世界160カ国以上で放送され、20カ国以上でローカル版が制作されていると言う。まさにオリンピック並の広がりを持ち、番組の内容は、鍛えられた競技者が難しい障害を体力だけで乗り越えると言うスポーツそのものでもある。これほど、テレビを前提としたイベントの種目に求められている競技はあまりない。
今回のテストイベントの後で、11月の国際近代五種連盟の総会で2028年ロサンゼルスオリンピックの近代五種のフォーマットを決める投票が行われる。そこで決まるフォーマットに、SASUKEが入るかだ。TBSの番組が、果たしてオリンピック種目になるのかどうかしばらくワクワクして待つことにしよう。