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イギリスにはまだ見ていないフェルメールが4枚あるのだが、今回は2枚を見ることができた。ナショナル・ギャラリーで、「バァージナルの前に座る女」と本来は、ケンウッド・ハウスにあるはずの「ギターを弾く女」 だ。ケンウッド・ハウスは現在改修中でほとんどの所蔵品は海外に貸し出し中だが、フェルメールのみイギリスにとどまりナショナル・ギャラリーに展示されていた。ナショナル・ギャラリーにはるはずの「バァージナルの前に立つ女」 は展示されていなかったが、貸出し中なのか、どうかはわからない。
小林頼子さんも書いているが、イギリスにあるフェルメールは最晩年の作品で筆運びなどが精緻さを欠き、簡略なものになっている。「バァージナルの前に座る女」は青い衣装の立体感などが好きな作品だが、今回初めて作品を直接見て、小林さんの指摘が良く分かった。立体的に見える袖のあたりは近くから見ると書きなぐったような荒い筆となっている。でも考えてみれば、それでも立体的に見るならば、それは手抜きではなくフェルメールの新しい技法とも言える。
ケンウッド・ハウスにあるはずの「ギターを弾く女」は、よく言われるように構図がこの時代の他の作品とは違っていて、人物は左端に寄せられていて新しい絵に見える。 他の作品では光が左から来ているのに対して、この作品では右から光が来ている。写真からでも気がつきそうなものだが、今回初めて気がついた。他にも右からの光の作品があったかどうか、もう一度チェックする必要がありそうだ。30数枚しかないからこの作業は簡単だ。
それにしても「バァージナルの前に立つ女」はどこにあるのだろうか。