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昼休みに銀座ニコンサロンで開かれている阿部直樹さんの「壁」というタイトルの写真展に出かけた。この数ヶ月で見た写真展の中では最高に好きだった。
ウィトゲンシュタインの言葉に「見るということは、そのものを見尽くして、そのものの名前を忘れることだ」という言葉があるが、まさにそのイメージに近い。光と影を見尽くして見ているものの対象は消えて光と影だけが残っている。コントラストがあまり高くなりすぎていないプリントは、ある意味で叙情的である。写っているものがすべて壁ではないが、一目で見て何か分かるという者でもない。つまり被写体を撮っているわけではなく、そこに反射している光や影を純粋に追いかけている。
すべての写真に日付と撮った場所が表示されていたが、あれを記録しておくのはきっと大変だと思う。被写体の形が明確でないから見て分かるものでもないので、ネガの段階で日付と場所を管理しているのだろう。私も被写体がはっきりしない写真をたくさん撮っているが、後で見て、どこで何を撮ったか分からないものがたくさんある。
あまりにも気に入ったので期間中にもう一度行ってみようと思う。
名称:阿部直樹写真展「壁」
会場:銀座ニコンサロン
会期:2011年10月26日~2011年11月8日