マイクル・コナリー最新作 シリーズ第13作「The Overlook」
いつものハリー・ボッシュ。ロス市警に戻って、未解決事件ユニットを経て、強盗殺人
ユニットに移っている。前作のEcho Parkの事件から半年後の設定。パートナーも
Echo Parkで負傷したKiz Ryderが異動して変わっている。
今回は、テロとの関連でRachel Wallingとの関わりが大きい。いつものように
激しく衝突する二人だが、今回は国家の安全保障が問題となるため、レイチェルの
FBIと部門と殺人事件を担当するハリーは正面から衝突する。
また、ロス市警内部の政治的問題もあり、ハリーの捜査はいくつもの制限を受けるが、
そこはいつものハリー、やや強引なやり方で捜査を進める。このあたりは、この
シリーズの好きなところで、官僚的なやり方が嫌いな私の趣味に合う。
ただ、今回の作品は、いつもの驚きの結末が用意されていないというか、用意されて
いるけれど、ややパンチに欠ける。
それに、ハリーの独白、音楽のこと、ハリーの自宅からの景色に託して語られるハリーの想いなどの記述がなく、
いつものシリーズとは違った印象を受ける。プロット中心でストーリーが進行するが、内容的には
やや全体的に薄い印象だ。それは、テロとの関連で、短い時間に狭い範囲内で
事件が進行するため、仕方なかったのかもしれない。
ハリー・ボッシュ・シリーズの面白い点
それは、著者が書いた順番で読み進まなければいけないということ。また、ハリーもの
ではない他のシリーズも一緒に書かれた順番で読みすすめなければいけない。そうで
ないと、分らないことが出てくるし、犯人も分ってしまう。それに、ロス・アンジェルスを
中心に話が進むが、登場人物が重なっていたり、特定の事件が他のシリーズでも
語られたりする。テリー・マケレイブは死んでしまったから駄目だが、The Lincoln
LawyerのMickey Haller が登場するシリーズも書いてほしい。Mickey Haller は
ハリーの異母兄弟という関係もあり、弁護士と刑事で対決あるいは協力なども
面白いかもしれない。
ともかく、いくつもの事件で対立しながら協力してきたレイチェルとの今後の関係も
見逃せない。次回作がいまから楽しみだ。