驚くほどの額の役員報酬が認められたらばかりのイーロン・マスクは、色々なプロジェクトをやっているようだ。衛星インターネットのスターリンクも、その一つだ。だが、スターリンクが、地球上のどこにいても携帯電話で通信できる「Direct-to-Cell (DtC)」と呼ばれる技術の開発を進めていることは知らなかった。地球のどこでも基地局から遠く離れた場所でも、スマホで接続してコミュニケーションを可能にするこの構想は、画期的なものだ。
だが、記事を読むと、DtCを実現するのは容易ではないそうだ。スマホやその他のデバイスを衛星に繋いで、即座に確実につなぐというのは、技術的に難易度が高そうだ。しかしスターリンクがの新技術のDtCは、まさにそれを成し遂げようとしているらしい。これにより、地球上の100%の場所でモバイル接続が確保されることになる。
スターリンクは既に、DtC対応の衛星を13機ずつ2回に分けて打ち上げているそうだ。構想ではなく、すでに始まっているのだ。現時点ではテキストメッセージの送受信が可能で、2025年までに音声・データ通信やIoTにも対応する計画だという。
DtCの最大の障壁は、「アンテナとして機能する」特殊なハードウェアとソフトウェアを備えたスマホの開発だった。それは、そうだ。普通は衛星からの電波を受ける大きめなアンテナが必要だ。しかしスターリンクは、既存の携帯電話でDtCを利用できる方法を見つけたそうだ。
しかも、スターリンクの親会社のSpaceXのおかげで衛星打ち上げコストが低いため、比較的短いサイクルで衛星を交換することが可能だ。つまり、衛星からのモバイル通信に対応した技術が登場すれば、すぐにでも衛星を新しくして対応ができる。
スターリンクは今このタイミングでDtC衛星を配備することで、将来のグローバル通信プロバイダーとしての地位を確立しようとしている。
スターリンクのDirect-to-Cell (DtC) 技術は、衛星に搭載された高度なeNodeBモデムで、通常のローミングネットワークと同様の接続が可能になる。しかも、既存のLTE規格の活用しているので、 DtCは、ハードウェア、ファームウェア、専用アプリを変更することなく、既存のLTEスマホで動作する。これにより、シームレスなテキスト、音声、データへのアクセスが提供されるそうだ。
つまり、スターリンクのDtC技術は、衛星に搭載された高度な機器と既存のLTE規格を活用することで、特別な改造なしに、今あるスマホを直接アンテナとして利用することを可能にしている。
スターリンクのDtC)技術を使った具体的な用途は、現時点では緊急時の通信手段や災害時や山間部、海上など携帯電話の圏外のエリアでの通信や既存の通信サービス網の補完だそうだ。都市部であっても、建物の陰になるなどして携帯電話の電波が届きにくい場所では、DtCを使って通信を補完することが可能になる。
だから、スターリンクのDtC技術は、当面は既存の携帯電話サービスを完全に置き換えるものではなく、補完する役割を果たすと考えられているそうだ。その理由は、通信速度とキャパシティの制約があることや、DtCの電波は、建物の壁などを通過しにくいという特性があるため、屋内での通信は難しいからだ。
ただし長期的には、通信技術の進歩により、DtCが地上系ネットワークを徐々に置き換えていく可能性もあると予想するのが普通だ。イーロン・マスクもそこまで考えてこのビジネスを立ち上げているのだろう。それが実現すれば、なんということだろう。地上の何千兆円の規模(単位が想像できないが)の世界各国の携帯電話基地局ネットワークがすべてゴミの山になる。しかも、衛星を安く打ち上げることができるのは彼だから、世界のモバイルネットワークを独占することになる。恐ろしいことをやっているものだとレベルの違いを感じる。だからこそ、天文学的な報酬も認められるのだろう。