運動が健康に良い事はよく知られている。また同時に精神の健康にも良いと信じられてきた。今までに発表された研究でも、運動が不安障害を軽減することは、示唆されている。しかしながら、今まで行われた研究は、小規模な、短い期間の調査であったり、ネズミについての研究であった。
これに対して今回発表された研究は、大規模で長期間にわたるもので、運動が精神衛生に与える影響を調査したものである。
この研究はFrontiers in Psychiatry (精神医療最前線)に発表されたスウェーデンのLund Universityの研究者たちの調査である。この研究者たちは、クロスカントリースキーの大会の出場者を対象に調査を行った。
このクロスカントリースキーは、スウェーデンで毎年3月の第1日曜日に開催されVasaloppet(ヴァーサロペット)で、いくつかのコースがあるが最長のものは90キロメートルである。今年は100周年になる世界最古のクロスカントリースキーで、参加者が最も多いと言う。
以前にも、この大会の出場者を対象者として、心臓病やがんのリスク、寿命などについて調査が行われている。今回は研究者たちは、この大会の出場者を対象に神経医療の病歴についての調査を行った。対象者は1989年から2010年にかけて大会に参加した約20,000人の男女で、スウェーデンの医療データベースとクロスチェックを行い、10年から20年にわたる不安障害などの診断結果がないかどうかを調べた。この対象者との比較のために、コントロールグループとして、データベースから無作為に、レースに参加しておらず、比較的運動量が少ないと考えられる約20,000人の診断結果も調べた。
この調査の結果は明確で、クロスカントリースキーに参加した人の不安障害などの診断数は、こtんトロールグループに比べて、50%以上も少なかった。例外は上位に入賞した女性のスキーヤーで、レースに参加しなかったコントロールグループの同年齢の女性に比べれば、発症例は少なかったが、他のレース参加者に比べると不安障害の発症が多く見られた。
調査の結果からは運動と不安障害の低減効果については対相関関係があると結論づけられている。研究者たちは、このような精神の健康をもたらすためには、運動として必ずしもクロスカントリースキーでなくても良いと述べている。WHOが推薦するような毎日30分の早足のウォーキングや同様の運動が、精神の健康に役立つとと言うことだ。
ただし、この調査の結果にあるように、競争的な運動を行う女性については不安障害などの発症の事例があるために注意が必要だとしている。
この調査の結果は、クロスカントリースキーの参加者のその後の精神の健康状態を調べたもので、運動と精神の健康についてのメカニズムを解明していない。推測として、運動により、精神状態を明るくする、脳内のドーパミンやセレトニンと言った脳内物質の分泌が促進されることや、体全体や脳の炎症反応を抑えることにより、精神の安定がもたらされると推測しているに過ぎない。
もちろん個人的には、メカニズムが明確でなくても、コントロールグループに対して明確な違いが証明できているために、その効果があると納得するだけで充分だ。このような記事を読むと、今日は朝の散歩をやめようかと言う気分の日でもがんばって出かける気にはなる。