雲南省の多依樹村で夜明けを見るために元陽まで出かけた。昆明空港から元陽までは330km。100元でバスが 出ているが私の中国語ではたどり着けない可能性がある。それで、北京発の外国人向けのツアーで行った。多依樹に行くかどうか確認していなかったら案の定、多依樹には行かないとのこと。理由は道が悪くて元陽の中心の町、新街鎮から27kmも離れているので、多依樹に行ったら一日つぶれてしまうとのこと。
仕方ないのでツアーから離れ、三輪軽自動車をチャーターする。 新街鎮の広場にたくさんいるので、中の一台のジャオさんと交渉して100元で多依樹まで行って貰う。
朝5時半にホテルの前の道にジャオさんは待っている。街を出てガタガタの山道を走るが、小さな三輪は馬力がなくスピードが出ない。多分オートバイのエンジンを改造したような車だからか、車内には排気ガスが戻ってきて異常に臭い。スピードの出ない三輪車をSUVや乗用車、バス、タクシーが時々追い越していく。道は狭く曲がりくねっているので、追い越す場所が来るまで後に着かれる。この時だけは少し周りが見えるが、街灯も道路灯もない真っ暗な道だ。どこを走ってくるかも分からない。いくつか村を通り過ぎる。
7時になる少し前に、ジャオさんが車を止めて「着いた」と言った。そこは、狭い道に車が大渋滞している場所の手前だった。車から降りて数百メートル先の灯を指さす。私は、11時と言って地面を指さして、灯に向かって歩く。暗い中で、尾根の上の道を歩き出して、左手に湖があるのに気がついた。薄明かりにぼんやりと白い水面が見える。かなり大きな湖面と思った時に、それはあり得ないことを思い出した。「雲海だ」。 ぼんやりと谷の下の方に白いものが見える。ここは標高2,000メートルの山の上だ。
灯は料金所だった。30元で展望台への入場料を取っている。 すでにかなりの車と人が集まって日の出を待っている。日の出まで1時間近く時間があるので、展望台に行かず、まっすぐ村の方に向かって歩き出す。数百メートル歩いた辺りで尾根の道を下の方向に降りて村に向かって歩き出す。カラン、コロンと乾いた鐘の音がする。誰もいない真っ暗な村の道のあちこちで家の庭から水牛がいるのが分かる。空は白み始めている。
焦って村を抜けて村の向こうの水田まで行こうと歩く。道は分からない。下へ下へ。曲がりくねった村の道はどこに続くか分からない。空は赤みを増している。早く村を抜けねば。その時に白い鳥を数羽連れた男が前を歩いているのに気がついた。村人だ。アヒルか何か連れて散歩だ。同じように下に歩くと、しばらくして村の外れまで出た。
空はさらに赤みを増して、遠くまで見渡せるほど明るくなっていた。その時は気がつかなかったが雲海も晴れてしまったようだ。バックからカメラを出して、持って来た三脚を使わずに手持ちで撮った。