エクス=アン=プロヴァンス

by Shogo

ラグビーワールドカップ2023の日本対イングランド戦をニースに見に行くことを決めた後、旅程を考え始めた。ANAで行くので、ヨーロッパのフランクフルト、ロンドン、パリ、ミュンヘンを経由してニースに入ることになる。最終的にはフランスに行くのだからということでパリ経由にした。

その後は、どのルートを使ってニースに到達するかの検討だ。はじめての南仏ということで、以前より行きたいと思っていたサント=ヴィクトワール山を見に行くことにした。セザンヌが生まれたエクス=アン=プロヴァンスには生家やアトリエも残されており、彼が描いたサント=ヴィクトワール山も見ることができる。彼はたくさんのサント=ヴィクトワール山の絵を描いており、あちこちで見たが、日本のアーティゾン美術館にある作品は中でも好きな1枚だ。

サント=ヴィクトワール山は、エクス=アン=プロヴァンスの東側に位置する、標高1042メートルの山だ。セザンヌは、生涯にわたってこの山を描き続け、約80点の作品を残している。東側にあるということで夕陽を浴びることになり、夕方に赤く染まった山を見たいと思っていた。(これは残念ながら実現しなかった)

セザンヌがサント=ヴィクトワール山を繰り返し描いた理由は、いくつかの説がある。ひとつは、彼がこの山を故郷の象徴として捉えていたこと。セザンヌは、この山を描くことで、故郷への郷愁や、故郷への愛着を表現したと考えられる。

もうひとつの説は、彼がこの山を、芸術的な実験の対象として捉えていたこと。セザンヌは、この山を描く中で、遠近法や色彩の理論を探求し、独自の造形表現を追求したと考えられている。実際に、彼の静物画と同様に多視点で風景が描かれていることは、多くの解説書に書かれていた。この表現は、キュビスムや抽象絵画など、その後の近代絵画の展開に大きな影響を与えた。

エクス=アン=プロヴァンスに行くことを決めると、あとはルートだ。パリからTGVを使うか、飛行機ということになる。4時間以上も電車に乗るのが辛そうなので、飛行機にした。

パリからマルセイユに向かうエアーフランスの飛行機は、ラグビーワールドカップの観客と思われるラグビージャージを着た人で一杯だった。

出発時に飛行機が遅れたが無事にマルセイユ空港に到着。今回の旅行で移動は最初はレンタカーも考えた。だが、最近は夕方や夜の運転は目に自信がないので、レンタカーを諦めて基本的にはUberに決めていた。唯一の例外はマルセイユのエリアからニースに移動する際にはUberには遠すぎる。すると、バスか電車と言うことになるが、これは山中の高速道路を行くよりは海岸線を走る電車の予約をした。

マルセイユの空港は工事中で、Uverの運転手に会うのと多少時間がかかったが、無事に乗り込み、エクス=アン=プロヴァンス(以下エクス)に向かう。マルセイユ空港からエクス中心部までは約1時間程度。Uberの料金は80ユーロ位だった。もちろん、バスで行くことも可能だが、荷物を持ってバス停から宿まで歩くのは年寄りには難しいので、1番楽な方法を選んだ。

マルセイユ空港を出て高速道路でエクスに向かう。パリから来ると南仏らしい明るい光が眩しい。ゴッホの絵に出てくるような糸杉の林がたくさん見える。赤茶けた山と岩山など明らかに違う生態系に来たことがよくわかる。

渋滞もなく順調に進んでエクスに着いた時に運転手が何か説明するが理解できない。この時の運転手はあまり英語ができないために、多少コミニケーションに問題があった。問題は、どこに車をつけるかということだった。Uverのアプリで指定した場所には、車ではいけなかった。それは、エクスの中心部は車の乗り入れ禁止になっているからだった。

エクスの宿は、繁華街のど真ん中にあった。リビング広いリビングを持つアパートをAirbnbで奮発していた。問題は、到達したものの、アパートのある中心部までスーツケースを引っ張って10分近くも歩く羽目になったことだ。しかも、週末の混雑の中、石畳でスーツケースを引っ張って歩くのも難しかった。

無事にAirbnbの宿を場所を見つけ、鍵も発見したが、1階のドアの開け方がわからない。場所は繁華街のど真ん中で、たくさんの観光客などが通り過ぎるし、露天も出ている中で、ドアを開けるのに四苦八苦した。オーナーに電話をするが、なかなか捕まらない。仕方なくすぐそばのカフェでお茶をすることにした。しばらく待っているとオーナーから電話があり説明を受けて鍵を1階の鍵を開ける事はできた。何の事は無い。鍵のキーホルダーと思っていたものが非接触式の電子ロックだったのだ。

今回の旅行ではモバイルWi-Fiを持たず、使っているiPhoneの一方にはeSIMを入れ、もう一方はeSIMに対応してないので、パリの空港で使い捨てSIMを購入して電話を使えるようにしていた。つまり電話二台体制だ。このヨーロッパで使える電話番号が2つあることで、様々な場所で役立ったが、この時はいつものようにモバイルWi-Fiで電話番号を持っていなければ部屋に入るのがずいぶん遅れただろう。

このパリからエクスへの移動に関しては、パリの出発で飛行機が遅れたことや、マルセイユ空港でUberの運転手に会うまで5分以上かかったこと、予想外の車の乗り入れ禁止のためにアパートまで長く歩いたこと、アパートの1階の鍵を開ける方法がわからずに苦労したことなど予想外のことがたくさん起こりかなり焦った。

アパートに入ってその部屋の広さが、写真以上に広かったことに驚いた。大抵の場合、このような室内の写真は広角レンズで撮られているので、写真で見るより実物が狭いということがある。この部屋の場合には部屋が予想より広かった。

部屋に入って簡単に荷解きをして、いくつか候補としてリストアップしていたレストランに予約入れようとしたら、ことごとく休み。残念ながら予定したレストランには行けず、アパートを出て30秒で着く南仏のシャンゼリゼ通りと言われる、ミラボー通りの1番近いレストランに入った。ちなみにこの南のシャンゼリゼと言うのは、ずいぶん大袈裟な表現だ。確かに美しく広い通りであるが、ミラボー通りと比べられたら、シャンゼリゼもかわいそうだ。いろいろ予定通りに行かないエクスの最初の夜は暮れた。

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