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壊された街並みの中にも生活がある。補償金をもらって移っていった人とまだ残っている人がいるようだ。
調理や暖房に使われた練炭の炭が残されている。
周辺は高層のオフィスや住宅のビルが、そこまで迫っている。
いつまで持つのだろうか。オリンピックが終わって工事が再開されると移転を迫られるのだろうか。
北京の古い風景が消えていく。
時々、その北京の古い風景が日本の昔に見える。
そして、日本の古い風景は写真の中にしか残っていない。昔、東京の古い風景を集めるためにカメラマンと一緒に谷中や佃の街を歩いたことを思い出す。井戸を真ん中にして長屋が集まっているような街並みだ。もう20年も前の話なのであの風景は残されていないだろう。ただ大事なのは景色ではなく、住民が楽に心豊かに暮らせるかが問題なのだが、日本のあの街の住民はどうなったのだろう。