うるう年は知っていたが、今朝、記事を読むまでは、うるう秒というのがあるのを知らなかった。時間などの単位を管理している国際度量衡局(B.I.P.M.)が暦と地球の回転にかかる実際の時間を一致させるために、うるう秒を管理しているそうだ。
日常生活で使われている時間はグレゴリオ暦と呼ばれ、16世紀にローマ教皇グレゴリウス13世によって、シーザーが定めたユリウス暦を変更してできた。シーザーが定めたユリウス暦は紀元前45年から実施され、1年を365.25日分とした。このために4年に1度366日の閏年を挿入する。しかし、この暦は、実際の年よりも11分14秒長く、このために教皇グレゴリウスレオス13世が暦を改正して、400年に3年だけ閏年を置かないグレゴリウス暦を定めた。まだ、地球の回転との誤差はあるが、数千年に1度変更すれば良い程度になった。
知らなかったが、教会や宗教によっては今でもユリウス暦を使っている場合があり、その場合のグレゴリオ暦との差は現時点で13日程度あるという。また天文学でも1年を365.25日とする時間単位を使い、これをユリウス年と言う。1光年と言う場合には、真空の中の光が1ユリウス年に進む距離として今でも使われているそうだ。
うるう年を使うことで、季節のズレを最小限に保っている。同じように1日の長さも誤差があるために、うるう秒が使われているようだ。
秒は、かつては暦の1日間をさらに細かく分解した、1日の86,400分の1として定義されていた。しかし1967年に、原子時計を使って秒の単位を決めたそうだ。これは、長さや重さが、物理的な基準器の誤差を避けるために変更されたのと同じ考え方だ。その際に、セシウム133の原子の振動数91億9263万1770回と決められた。この長さの86400倍が1日の長さになった。天文学的な地球の回転とは切り離されて「時間」が誕生したことになる。
しかし、その地球の自転は年々少し遅くなり、地球の自転から得られる天文学的な1日の長さは、原子時計の秒から求めた1日よりも徐々に長くなってきたのだそうだ。このために1972年以降、うるう秒が追加されて、1972年に20秒のうるう秒が追加され、その後27秒が追加されてきた。
しかし、このうるう秒の追加作業は非常に困難なことを想像される。世界中の経済の生活、経済、軍事などありとあらゆることが秒より短い時間の中で行われている。1秒もあれば数億回の株の取引をすることが可能だ。しかも、20世紀の終わりから、世界のあらゆるものが、ネットワークで繋がり、同じ「時間」を共有しなければいけない。
このために専門家は2035年までに、うるう秒を廃止し、完全に原子時計の時間で時間を管理することを提案している。この提案は11月18日にヴェルサイユで開かれる。国際度量衡局の加盟国の会議で投票が行われるそうだ。この提案が可決されれば、今後時間は原子時計によって管理された時間を使うことになり、その時間が実際に地球の自転の時間と1時間ずれるまで数千年かかるそうだ
うるう秒の運用は、複雑で、そもそもミスが起きる可能性が高いであろう。その際に様々なタイムスタンプが押された経済的な取引や事案の時刻のずれが起こると言うようなこともあるかもしれない。専門家は、それを恐れているのと思われる。
世界の時間は、現時点では世界中の国立研究所にある原子時計が読み取る時間を基にして協定世界時(U.T.C.)に定められている。しかし、最近国連の国際電気通信連合は、通信ネットワークが使用数時間をU.T.C.ではなく、GPSの時間を公式の時刻とするように提案した。GPSはうるう秒を使っていないため、うるう秒による混乱を避けることができるからだ。しかし、これに対しては、事実上、アメリカ軍が、世界の時間を管理することになってしまうので、多くの反対意見があったそうだ。
さらに、多くの国が、このうるう秒の廃止には反対しそうだという。例えば、ロシアは、自らの衛星測位システムであるグロナス衛星システムの大幅な修正を余儀なくされるために、うるう秒の廃止には反対だそうだ。イギリスは、グリニッジ標準時に対して、感傷的な価値観を持っているために、態度ははっきりしていない。
このようなことで、11月18日の投票の結果は現時点ではわからない。うるう秒が、当面生き残るのか、あるいは2035年以降に廃止されるのか。しかし、仮に今回否決されたとしても、現実の地球の動きと、概念としての「時間」の関係の調整は、人類が直面する大きな問題である。「時間」は人類が発明したものの中でも、最も大きなものの一つだからだ。近代の人類以前には、我々のような厳密な時間の概念は存在していなかった。日の出、日の入り、月の満ち欠け、季節、誕生、成長と死亡など、秒単位で考えるものでなかった。我々が、利用して、かつ縛られている「時間」は人類の重要な虚構の一つである。ネットワーク社会では、正確な時間なしに何も存在できない。今や、20世紀以前の時代のように朝起きる時間を管理するだけのものではないからだ。